第1話「不実の胎動」 ページ1
「はぁい!紳士淑女の皆様ァ!!御機嫌麗しゅう?」
勢い良く踏み出した靴底がカツリと音を響かせた。
さわさわと気配が漂う。
広い舞踏室で私は微笑む。
「この世界は実に混沌としている。興味深い事が山ほどある。とても魅力的…そうは思いませんか?」
気配の元である無数の異形が同意するかのようにざわめいた。
「でも。それにも関わらず大変よろしくない事がある」
私は右手を握り締めて自分の顔の前にとどめた。
「…それは「退屈」だ」
右拳を開く。
_赤黒い本が現れた。
私はそれを左手で掴む。
「だが…なんと悲劇的な事にその「退屈」は運命として、必然として…この世を包み込んでしまうのです」
その言葉に気配達が震える。
「それは2012年3月21日。とある男が引き起こした強制的な定めにより育まれた因子が暴走する事で起きる」
私は本を眺めた。
「しかし」
するりと指を本に這わせる。
「対処法は…ある」
乱雑とした歓喜の気配が全てを震わせた。
床も、壁も、柱も、硝子も、空気も。
「我が内包の…因子によって「あるべき姿」を」
「「退屈」という罪に…狂乱の罰を」
私はゆっくりと目を閉じ、無数の気配にその身を沈めた。
「さぁ…僕の
「DIOの元部下…いいや、今でも部下ってところかな」
「情報はこれで全部か…」
承太郎が私の机に広げられた書類に目を落とす。
「ああ…そうだ。調べられる情報はコチラで調べ尽くした。DIOの元部下達からの証言に…DIOの日記の事…。兎に角これで全部だな」
私は承太郎にある男の写真を手渡した。
「ジョンガリ・A。奴は狂信的にDIOに忠誠を誓ってるらしい…だから…今回の件は…」
恐れていた事が起こってしまった。
こんな事が起きないようにと_承太郎は家族から離れていたのに。
私も離れていたのに。
「つまりは…俺への「復讐」ってとこか」
私は承太郎の方を見れなかった。
何も言えない。
「……あんたは別に関係ない…。多少はあるのかもしれないが、流石にもう無茶はさせられない。俺がやる」
「……承太郎」
「だから…徐倫が戻ったら会って話をしてやってくれ」
私は思わず顔を上げ、承太郎の顔を見た。
「あいつはあんたの事が好きだったからな。俺よりあんたの方がうまく声を掛けてやれる。妻の方もきっとそうだ」
承太郎は扉の方へ歩き出した。
「大丈夫だ。絶対に娘を連れ戻す。この空条承太郎がな」
そう言って振り向いた彼の顔は_。
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作者名:夢書き | 作成日時:2019年1月4日 10時