狐の嫁入り【中原中也】

嫁入り 3 ページ4

綺麗に白無垢を着せられ、顔に軽く化粧をさせられた

顔はなんとか綿帽子で隠せる

狐の嫁入りの手順は、小さい頃から教わってきた

まず妖狐さんと共に住処である神社へ行き、そこで体を清め、お酒を3口で飲み干す

一般の和婚を簡単にしたものだ

大体狐の嫁入りでは未成年が多いため、お酒のアルコール度は嫁にはない

それでも、お酒の味はするらしい

…飲みたくないな

そんなことを思っている私は、意外と現実を受け止められている

狐の嫁入り後、妖狐さんに食われようが何されようが、どうでもいい

ﾀﾋねるなら、直ぐにでも両親の元へ行ける

こんなにも嬉しいことは無いだろう

外に出て、用意されたカーペットの上を歩く

最初に白無垢など、衣装を着るのは里の神社

そこの鳥居まで出れば、既に妖狐さんがいた

無言で隣に行き、歩き出した参列に足を合わせる

…にしても、歩きにくいな

階段もあるし

『───わっ…』

やば、落ちる

？「ッと、大丈夫か？」

『…ぇ……』

来たる衝撃に備え、目を瞑っていると、支えられる感覚が体に走った

横にいた妖狐さんに助けられた…

なんで…？妖狐さんにとっては大嫌いな人間なんか…

私が転けたことに気づかず進む参列に気づき、急いで体制を整えて歩き出す

妖狐さんもそれに気付き、横を歩き出す

…お礼、言った方がいいよね…。でも、人間なんかが話しかけても……

『ッ…』

ええぃ腹をくくれ私…！！

？「！……」

『……っあ、りがとぅ、ござぃ、ます……』

妖狐さんの着物を指で少し引っ張り、なんとか声を出した

？「……ふっ、嗚呼。気をつけろよ」

綿帽子からちらりと見えた表情は

とても嬉しそうに笑っていた

…その顔に少し見とれたことは、気づかなかったことにしよう

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