12. ページ12
私は皿洗いを済ませ、次々とやって来る常連客の接客をする
今日は土曜日だからか、学生が多く来るように感じられた
と言っても3人くらいだが
こうして時間が過ぎ、もう閉店時間になった
残りの仕事は掃除である
私は部屋全体をぐるりと見渡すと息を吸い込んだ
なにせ、今日は忙しくて疲れたのだ
「手伝う?」
隣を見れば首をかしげている美穂ちゃんの姿。彼女の言葉に私は、大丈夫と答えた
『今日はだいぶ美穂ちゃんに助けてもらったから』
私の言葉を聞いて、彼女は「そっか」と軽く答えた
私が箒を取り出す丁度にテレビを見ていた店長が声を出した
「また喰種ねぇ…」
私は箒を持ったまま、店内の隅に置いてあるテレビを見る
テレビ画面には大きく「今日3回目の喰種の補食、同一の喰種か」と見出しが映されてあった
「え、また20区内?………じゃなかった。A、4区だってー」
美穂ちゃんがニュースの情報を伝えてくる
同一の喰種だとしたら、なんで20区と4区の離れた場所で補食をするのだろう、と箒で床を掃きながら頭の隅で思った
「怖いわね…Aちゃん。もう掃除終わっていいわよ。暗くなる前に早く帰った方がいいわ」
返事をして私は箒を仕舞う
そして美穂ちゃんと一緒に更衣室へ向かった
椅子が少しと大きめなテーブルがひとつ。それ以外の家具はロッカーと観葉植物
そんな殺風景な室内の更衣室に到着する
部屋に入ると早速、制服から私服に戻し、制服を畳んで自分のロッカーに仕舞う
ロッカーの閉まるバタンという音が室内に響いた
『美穂ちゃん、先にバイバイ』
彼女が少し笑いながら手を振る
私は更衣室を出て出口へと向かった
『店長、お疲れ様でした』
まだテレビの画面を見ていた店長
私が声をかけると何かを思い出したようにハッとした
「Aちゃん、これ。誰のかわかるかしら?」
私は店長の手元に握られているものに視線を向ける
『……スケッチブック…?』
店長から受け取って少し見ていくと一枚のページにキリンが描かれている絵があった
このスケッチブック、なんか見覚えがある
「これ、少し預かっててくれないかしら?」
店長の言葉に私は、「…え」と声を漏らす
無理もない
「前は忘れ物を店で保管してたのよ。だけど私、人の物をすぐ汚くしちゃうの」
フフッと笑う店長
頬には小さな笑窪があった
『わかりました。じゃあ、お先に失礼します』
店長に笑顔を向けて私はスケッチブックを手に持ち店を出た
外の風はすっかり冷たくなっていた
20人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yui(プロフ) - 文も読みやすくて面白いです。続きをぜひ待ってます! (2018年11月26日 1時) (レス) id: 2a71d88e3d (このIDを非表示/違反報告)
リヴ華 - えっ!ありがとうございます!!この作品を更新しようか停止しようか悩んでいたんですが、応援してくれる人がいるなら頑張ってみたいと思います (2018年10月26日 18時) (レス) id: 49646591f3 (このIDを非表示/違反報告)
細胞 - この作品好きです!更新頑張ってください! (2018年10月10日 21時) (レス) id: e784bcfcdd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ