灰被りの夢 ページ44
「A」
『あ、二人とも、一年ぶり、また背伸びたんじゃない？』
「Aちゃんこそ、また可愛くなった」
『そのお世辞、もう聞き飽きたよ、でも、毎年欠かさず言ってくれるよね、ありがと』
「お世辞やないで、ほんまに、会うたびに綺麗になっとる」
『…コネシマがそういうのは、珍しいね、まあ素直に受け取っておくよ』
幼い頃から縁のある貴族の子供が、コネシマと鬱君。
所謂幼馴染みと言うもので、再婚後はかなり会う頻度が増えた。
それも、父も義母も完全に兄につきっきりになってしまったせいで、私の習い事は半分以上減り、必要最低限のコストに抑えられたからだった。
自由だと、そう錯覚してしまいそうだった。
「Aは、縁談の話、どこの受けるん？」
『えっ、と…何で、縁談のこと知ってるの？』
「一昨年くらいから有名な噂になっとったで、何せ、こんな上級貴族に婿入りできたら、人生勝ち組やろし」
「何より、Aちゃんみたいな人が、男共の目に止まらないわけがないしなぁ」
『何それ…喜んでいいの？』
「盛大にな」
『…ふふ、今はまだ考えてないよ、この状態が楽しいの』
いや、事実、私の心はあの時よりもとても身軽だった。
両親への憎悪から、兄への執着からも、私は解放されたのだから。
そのせいだろう。
令嬢らしく、ではなく、自分らしくあろうと思うようになって。
自分に対して、明らかな好意を寄せてくれる幼馴染みに、義兄に、そばにいて欲しいと思うようになったのは。
「A」
『…！お兄様！お帰りになっていたのね、お出迎えできなくてごめんなさい』
「いいんだよ、そうだ、今日は久しぶりに少し時間があるんだ、庭に行こうか」
兄は、まだ私が、純粋無垢に、あの庭だけに囚われている可哀想な妹に見えていたみたいだ。
その時、初めて私は、兄の手を取ることを躊躇った。
何か、嫌なものを感じたのだ。
不安、恐怖、嫌悪。
兄に対してじゃない、自分自身に対してだ。
『…勿論です』
それに気づいたら、壊れてしまうような気がした。
硝子のように、たった一瞬の不注意で、粉々になって、もう、取り返しがつかないことになるんじゃないかと思った。
だから、兄の思うままに、兄の望むままに、その手を取った。
…いや、違うか。
私が、兄の理想のままでありたくて。
兄に、望まれているように手を取れば、まだ愛していてくれるのだと思って。
兄に愛されていたくて、手を取ったのだ。
結局、また兄に縋っていた。
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馬鹿の者 - 奥様＝廃被り(シンデレラ)兎＝奥様の兄さんと、すると段々、小説の題名の意味が… (2020年7月31日 6時) (
レス) id: 37e79557bb (このIDを非表示/違反報告)
馬鹿の者 - おっふ、考察全部違ったけど、面白いから満足です。あ、皆様廃被り姫を知っていますか？廃被り姫とはシンデレラの事なんですよ、んでこの小説の題名にガラスの靴があるじゃないですか、シンデレラにもあるじゃないですか、もしかしてそれで表現してる？ (2020年7月31日 6時) (レス) id: 37e79557bb (このIDを非表示/違反報告)
ハット(プロフ) - どんどん謎が解けていく、、、！めちゃくちゃ面白いくて、更新が楽しみです(*^^*) (2020年7月28日 18時) (レス) id: c9cf6e7c0b (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - 馬鹿の者さん» 三度めまして！ここから徐々に真実を出していこうと思いますので、楽しんでいただけたら嬉しいです！ (2020年7月24日 13時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
馬鹿の者 - メイドの子も怪しくなってきたね、そもそもcnsypでみた幻覚って子供の頃の記憶なのかな？それなら、いやでもう〜ん分からん( ・∇・)(長文連投失礼しました) (2020年7月23日 2時) (レス) id: ee9fba9597 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：五千時 | 作成日時：2020年6月30日 3時
