検索窓
今日:2 hit、昨日:12 hit、合計:19,144 hit

図書館[2]2 ページ23

「…着いたザンスよ。」

夜の図書館は明かりが落とされ非常灯だけがぼんやりと光っている。

周囲は静寂に包まれており、心なしか不気味さすら感じる。

『イヤミさん、ありがとうございました。』

「…気を付けるザンスよ。」

私はイヤミさんに向かって小さく頷くと、車を降りて図書館入り口へ向かった。

やや冷えた風が私を阻むように吹き付ける。

ホテルを出る際、クロークに預けたコートを受け取っておいて正解だったかもしれない。

コートの下はパーティードレスのままだが、大半を隠せているのであまり目立たないし寒さもしのげている。

私は入り口に立つと、横の壁にある、警備システムの端末を見た。

警備員ならば警備システムを操作する鍵は持っていて当然だろう。

案の定、警備システムは解除されていた。

私は用心しながら真っ暗な図書館内に足を踏み入れた。

・・・・・・・・・・・・

所々にある非常灯がぼんやりと館内を照らし出す。

その光は頼りなく、今にも闇に吸い込まれてしまいそうだとすら感じる。

件の本は恐らく、閲覧禁止区域である4階にあるのだろう。

私は足音を立てないよう静かに階段を上る。

歩きやすさを重視し、ヒールは比較的低めなものを選んで貰っていたので、ドレスの裾を少し持ち上げれば支障は無い。

4階へ続く階段の中央には「関係者以外立入禁止」の看板。

私はその脇を通り抜けて更に階段を上った。

階段を上りきると、古びた紙とインク、そしてカビの香りがふわりと鼻をくすぐる。

どこか懐かしく、私にとっては落ち着く香りだ。

しかし今はそれどころではない。

私は、4階の奥から時折漏れてくる光に目をやった。

非常灯のものにしては眩しすぎるそれは不規則に本棚の影からチカチカと光っている。

4階は本来、古書を保存しておく為の場所であるため、窓はおろか非常灯も最低限の数しかない筈だ。

私は息を潜めて光のある方へ向かった。

図書館[2]3→←図書館[2]1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
128人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紫かぶら(プロフ) - 狐火@リリさん» ありがとうございます。ラストのオチはかなり早い段階で決めていたので、そう仰って頂き嬉しいです。夢主ちゃんは六つ子に振り回される運命なんだと思います。新連載も予定しておりますので、機会があればお付き合い下さいませ。本当にありがとうございました。 (2018年10月9日 1時) (レス) id: fdc73fc447 (このIDを非表示/違反報告)
狐火@リリ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!展開がどうなるんだろう?!と楽しみにしてました!!仕事が終わってもずっといる六つ子と夢主ちゃん...ほんわかが続きそうですねw素敵な作品ありがとうございました! (2018年10月8日 22時) (レス) id: f1c0b03c70 (このIDを非表示/違反報告)
狐火@リリ(プロフ) - 紫かぶらさん» いやいや、全然気にしませんよ?!無理しないで紫かぶらさんのペースでふぁいとです!急かす人なんていませんから!ちゃんと読みますよー!更新ファイトです! (2018年4月30日 1時) (レス) id: 7e4f6c9350 (このIDを非表示/違反報告)
紫かぶら(プロフ) - 狐火@リリさん» 長期間更新していなかったにも関わらずこんな優しいコメントありがとうございます。完結に向けて頑張りますので、また読んで頂けたら嬉しいです。 (2018年4月29日 23時) (レス) id: d7e8ff9b83 (このIDを非表示/違反報告)
狐火@リリ(プロフ) - お久しぶりの更新お疲れ様です!待ってました!展開がすごい気になります!こうしんがんばってくださいー! (2018年4月28日 21時) (レス) id: 7e4f6c9350 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紫かぶら | 作成日時:2016年10月7日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。