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何のために ページ47

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佐野万次郎side





どうやら熱があるらしいAを
自分の部屋に寝かせてから、先にシャワーに向かう。




汚い仕事をした後だったから、
あいつに触れる前に洗い流しておきたかった。





見えない血が、湯水と混ざり合って
流れていくのをじっと見つめる。




俺もこのままどっかに流れていけないだろうか、
なんて虚ろな目で考えていた時。





水の音に混じって、
かすかに聞こえてきた小さな声。



聞こえづらいけど、Aの声。




水を止めて風呂場から出て、
スウェットだけ履いてからドアを開ける。




そこには、毛布を引きずってきた
Aの姿があった。






万次郎「A、どうした?」






声をかけると、目を見開いて俺を見る。



その目から、ぼろぼろ涙がこぼれ落ちて。






『怖い夢、みて……

目が覚めたら誰もいなかったから……』






泣きながらふらふらしがみついてきた。




肌に直接触れるAの身体は驚くほど熱い。


熱上がってるな。




Aは俺の胸に頬を擦り寄せ、
心臓の音を聞いて安心してるみたいだった。





……あの湯水みたいに、俺は流れていけない。




どんなに汚れても汚れても、
楽になることを許されない道を選んだから。




血溜まりにとらわれながら、
数多の苦しみを踏み潰しながら、
そうまでして戻ってきたい場所が
どこなのかわかった。




Aのために殺して、
Aのために戻ってくるのだ。




ただ彼女の笑顔をそばで見るためだけに、
そうして生きている。







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ぎゅってして→←三途、死す



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東卍京 - 梵天の作品はやっぱりいいですよね。 (10月31日 17時) (レス) @page35 id: cee3cd750d (このIDを非表示/違反報告)
清花。(プロフ) - シーチキンさん» ひいい!って叫びたくなりますよね(゚∀゚)笑 (2021年10月12日 11時) (レス) id: cf6bd6deb7 (このIDを非表示/違反報告)
シーチキン(プロフ) - 最高すぎて!!!!蘭ちゃぁあーん!! (2021年10月11日 18時) (レス) @page43 id: 05900c9320 (このIDを非表示/違反報告)
清花。(プロフ) - YULA.さん» 初めまして!ゾクゾクしていただけて嬉しいです〜!!頑張ります!! (2021年10月10日 9時) (レス) id: cf6bd6deb7 (このIDを非表示/違反報告)
清花。(プロフ) - あやさん» 嬉しいですすすす!!頑張ります!! (2021年10月10日 9時) (レス) id: cf6bd6deb7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:清花。 | 作成日時:2021年9月16日 18時

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