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第六十七話 自由人の発想 ページ19

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治くんが風邪を引いてから数日、今ではすっかり良くなり、幹部としての重い責務を果たしている。


そう、その筈なんだけれど。









「A〜」


「……治くん、重いからちょっと離れて」



カタカタとキーボードを打ちながら事務仕事をこなしていた私は、先程から気怠げな声を洩らしながら背中に重心を掛けて抱き着いている治くんに苦笑いを溢した。


矢張り風邪が治ったからと言って普段の生活習慣が治る訳もなく、それどころか前より仕事中私の所に来る事が多くなった気もする。




いや、勿論厭という訳ではないし、甘えてくれるのは当然嬉しい。


ただ文字が打ちづらく仕事が全然手に付かないし、治くんの部下も大層困っている。



因みに最近治くんが私の所に来る事はよくある事なので、治くんの部下もそれを把握して私の元に最初は来ていたのだが治くんが追い返してしまった。


治くんの部下が困ったように、救いを求めるように私に視線を送ってきた事に苦笑いしたのは記憶に新しい。






「…治くん、治くんはどうしてそんなに仕事をしたくないの?」


「だって詰まらないじゃないか。それに面倒臭いし成りたくて幹部になった訳じゃない。そんな事をしてる位ならAと一緒に居る方がずっと善い」




何とも素直なその発言はまさに自由人な治くんらしくて、私は苦笑いを浮かべる。


もうすぐ17歳になるとはいえ、治くんもまだまだ子供だ。自分の好きなようにしたいと思うのも当然である。





「でも仕事はしなきゃ駄目だよ?ちゃんと給料貰ってるんだし」


「……判ったよ。Aが云うなら」



私の言葉に不服そうにしながらも随分と素直に頷く治くんに何だか笑みが溢れて、私はその頭を優しく撫でた。


すると嬉しそうな顔をする治くんは、突然何か思い付いたように「あ…」と声を洩らす。


それを不思議に思って首を傾げれば、矢鱈輝いた瞳に私を映した。





「善い事を思い付いたのだよ!」




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葉桜 桜 - 凄く面白いです!1日にリメイク前の物まで読んで、お話が小説の神様みたいです!更新、楽しみに待ってます!! (5月2日 14時) (レス) @page19 id: e6215ef735 (このIDを非表示/違反報告)
わけめ - ついつい一気に読んでしまいました!更新、楽しみに待ってます! (2022年11月19日 23時) (レス) @page19 id: 979aaf8679 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 凄く面白いです! 無理しない程度に頑張ってください! 更新待ってます! (2022年7月14日 15時) (レス) @page19 id: 50f3e04b49 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2021年5月2日 15時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん - いや、神か?????面白かったです! (2020年11月19日 16時) (レス) id: 3ad67a8a12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月21日 17時

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