第四話 事務仕事 ページ5
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背後から抱き着いている治くんを引き摺るように歩き始めた私は、執務室の扉を開けた。
特に見慣れてしまったその光景を見渡し、私は治くんを仕事用の椅子に座らせると自身の定位置となっている席についた。
治くんの頭を一撫でしてから、一応私の物ではないノートパソコンと向き合う。
カタカタとキーボードを打つ私の手は、あまりに慣れすぎたせいか高速早打ちを繰り返している。
とは云っても、前世でも事務仕事はよくやっていたので最早慣れだ。
因みに云えば、今遣っているのは治くんの事務仕事である。
あまりに治くんが事務仕事を放棄し過ぎるせいで、部下達が困っているのを私はよく知っている。
当然幼なじみである治くんのせいなら、私は放っておく訳にもいかないだろう。
だから私は、日々治くんの仕事を手伝っている訳だ。
まあ、そのお陰で毎日ヘトヘトだけど、慣れるとどうって事なく感じてしまうんだから慣れとは恐ろしい。
と云っても、正直云えば前世の方が大変だった。
教師になって一年目とかなんてもう本当に大変で、危うくもう少しで過労死しそうだったし。
でも特に大変だったのは、矢張り大学受験の時だ。
私が受けたのは国立大学の教育学部だったから、受験の時は死に物狂いで勉強したのを今でもハッキリと覚えている。
あれはもう地獄だった。
とはいえ、教師になってしばらく経つと自然と慣れてきて、寧ろ楽しいと思い始めたのだ。
何だか昔が懐かしい。
「ねえA〜、仕事ばかりじゃなくて私にも構っておくれよ〜」
キーボードを打っている時、突然背中から重みが来た。
どうやら治くんが抱き着いてきたようで、正直云えば文字が打ちづらいし普通に重い。
けれどそれよりも今一番ツッコミたいのは、いや私が遣ってるの治くんの仕事なんだけど!?の一言である。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - I am gotさん» コメントありがとうございます!神作だなんて…!!(泣)こんな作者の作品を好いて下さり本当に有難うございます!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年7月21日 14時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
I am got(プロフ) - ヤバイ。神作。めっちゃ好きです!!続編楽しみにしてます!! (2019年7月21日 14時) (レス) id: dd6540e082 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 結月さん» コメントありがとうございます!沢山妄想しちゃって下さい!(笑)更新頑張ります! (2019年7月18日 10時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 今日も今日とて妄想させて頂いてます!更新待ってます (2019年7月18日 10時) (レス) id: 013547788b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月14日 16時