第二十七話 否定はしない ページ30
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いつにも増して甘えん坊な治くんの頭を優しく撫でて上げる。
少しだけ目を細めながらも私を見つめてくる治くんの頬に、私は触れるだけのキスをした。
少しだけピクリと肩を跳ねさせた治くんが、私の首筋に顔を埋めてくる。そのまま頬擦りをしてくるのは治くんの癖で、まるで猫みたいで愛らしい。
てか本当に可愛い。可愛すぎる。
「…ねえA、一つだけ…聞いても良いかい?」
「ん?どうしたの?」
治くんの言葉を不思議に思いながらも聞き返せば、治くんは少しの沈黙の後顔を上げてまた私の瞳を見た。
その全てを見透かすような焦げ茶色の瞳があまりにも綺麗で、思わず見とれるように見つめ返してしまう。
「…Aは、私の自 殺をいつも止める割に自 殺をやめろとは云わないよね。…それはどうしてだい?」
それはきっと、治くんがずっと抱いていた疑問なのだろう。
純粋に教えて欲しいという瞳で見つめてくる治くんの頭を撫でて、長めの横髪を優しく耳にかけてあげると私はゆっくりと口を開いた。
「…だって、治くんにとって自 殺は大事な事なんでしょ?」
それに、本当は知っているんだ。
今の治くんが本気で死のうとしていない事。アニメで見ていた時の治くんは本気だったけど、この世界での治くんは違う。
ずっと見てきたから分かる。
治くんの自 殺は最早癖だ。きっと治くんは私が居る限り本気で死ぬ事はない。私はそれを分かっていた。と言っても、本人は無自覚だけど。
それに何より、私は知っている。
「世の中同じ人なんて誰一人いない。その中には世間じゃ有り得ないなんて認定されるものを好む人だっている。だからと言ってその人を異端者扱いするのは、絶対間違っていると思うから」
これは前世で教師であった私の意見だ。
「だって、私だって自分にとって好きなものを否定されるのは嫌な気持ちになるよ。その自 殺癖だって、今の治くんをつくった一部だから…だからその自 殺癖を否定してしまえば、治くんそのものを否定する事になってしまう。私は、治くんそのものが大好きだから」
ていうか今思ったけどこれ物凄い告白をしている気がするんだけど。今更だけどちょっと恥ずかしいかもしれない。
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黒猫もふお - 神作品を発見してしまった……これが現実だったらいいのに……… (8月3日 11時) (レス) @page45 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
梅林 - 物語も面白いし、何より、え、もう太宰さんが可愛すぎてこっちが可笑しくなりそうでした。本当にもう泣きそうなくらい可愛かったです!!これが現実では無いと思うとめっちゃ悔しくなります(;o;) (2020年2月27日 2時) (レス) id: 837f5e2707 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 真菜さん» コメントありがとうございます!そんな風に思って下さってるなんて…!もう嬉し過ぎて涙が出ます!!(泣)本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きます!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
真菜(プロフ) - とても面白くて、大袈裟に感じるかもしれませんが、これを楽しみに毎日過ごしてます!リメイク版も楽しみにしているので、自分のペースで頑張ってください!!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: ef2b815640 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 東雲 祀さん» コメントありがとうございます!太宰さん可愛いですよね(笑)。楽しみにして下さって本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年6月29日 18時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年5月21日 14時