40話:衝動アラーム! ページ42
やっと解放されたのが7時半。6時に夕食をとっているはずなのに、新雲学園のみんなはうどんを完食してしまった。やはり運動する子は違うのだろうか。
片付けを終えて、ヘアゴムを探しに行こうとエントランスに出ると、雨が降り始めていた。
貴方「う…、つくづく間が悪い…。でも傘を取りに行くのも時間の無駄かな…。少しくらいなら濡れても大丈夫…。」
天馬くん達と行った温泉に向かって、躊躇いつつ雨の中走った。体力がないから、すぐにバテたし、雨も強くなってもう散々だけど。
でも、ロッカーや廊下、通った道をくまなく探したが、ヘアゴムは見つからなかった。
貴方「……どこに行ったんだろう…。天馬くんに顔向けできないよ…。はぁ……寒い…。」
本降りの雨が、どんどん体を冷やしていく。
戻った方がいい。でも、探し出したい。
せめて、門限ギリギリまでは……。
ー雪村sideー
7時半。気分転換に温泉でも行こうかと思ったのに、外は雨で濡れていた。初日から最悪だと思って、暫く窓ごしに降りしきる雨を眺めていた時だった。
雪村「…あれ……、藤咲か。」
真狩「どうした、雪村。」
雪村「敬語使え。…いや、今はそんなのどうでもいいか。マネージャーが、この雨の中傘もささないで出てったんだよ。ったく、何考えてるんだか。」
木瀧「追わなくていいの?」
氷里「ちょっと心配だよね…?」
雪村「…あーもー!木戸川と新雲の奴にも伝えとけ!オレは先に行くからな!」
らしくもない。正直、あの無知なマネージャーが気に入らないと思ってた。オレが昼間、ミーティングから抜け出した後、吹雪先輩はオレを追ってきて、アイツの素性を少し話した。
夕方には、貴志部がアイツについて語ってたのを耳にした。あの二人が言うんだ、アイツが努力してサッカーの知識を得ようとした事実も、素性がわからず、1人でこの知らない世界にいることも本当なんだろう。
だから何だと言ってやりたいし、心配してやる義理なんてこれっぽっちもない。つーか、アイツのこと正直全然知らねぇし、アイツだってオレの事嫌いだろ!なのに、アイツは…!
貴方『あ…!雪村さん…!ありがとうございます…!』
嫌味ったらしく言われたのに、アイツは笑った。
少し悲しげで、不安そうで、それでも
感情を抑えつけて無理矢理にでも笑顔を見せた。
雪村「くそ…!どこ行ったんだよ…!」
アイツから目が離せない。
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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年2月18日 23時