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「最初、俺と芽依はまー仲悪くてなあ」
坂木は驚いていた。
今ではそんな風には見えない、とのことなのだろう。
芽依が非難してくるのを、俺が受け流すという構図だったと思う。
俺は極力やらなくていいことはやらないタイプ。
芽依はやらなくてもいいことを全力でやるタイプ。
まさに対極というわけだ。
「でも景星は必死に仲を取り持とうとするんだ。
あの人には悪いけど、それが滑稽でさ。
そう考えてたら、険悪ムードがだんだんと冗談めいてきたんだ。
ノリというか、キレ芸みたいな。
なんだこのやろー、てめーこそなんだー、って感じ?」
想像してしまったのだろう、坂木は笑いながら頷く。
「んで普通に話すようにもなって、いつのまにか仲良しトリオになってたわけ」
話を終えると、坂木はこんな感想を示した。
『植原くんはいい人なんですね。
友達が仲良くなるために、頑張って』
「ああ、それに関しては、そんな綺麗な理由じゃないぞ」
指摘すると、坂木はこてんと首を傾げる。
たぶんこれは言ってはいけないやつだろうが、隠すのが面倒なので言う。
「景星は芽依のことが好きなんだ」
坂木はぽかんとした後、ほんのり顔を上気させた。
「あいつの態度見てなんとなく気づいてさ。
当人に言ったら、『なら手伝えよ!』ってうるさくて。
だから俺と芽依を仲良くさせようとしたのは、あいつ自身のためってわけ」
でも、それが俺と景星がただの同中でなくなったきっかけでもあったりする。
坂木は、おずおずと疑問を掲げる。
『じゃあ高地保さんと植原くんは付き合っているんですか?』
「いや、残念ながら。
よく一緒にいるのにさ、ヘタレなやつだよ」
まあ、芽依がパッパラパーすぎて景星の気持ちに気づかないのも原因だがな。
むしろ景星はやつのどこに惹かれたのか、俺にとってはわりと謎だ。
色々と思うところがあるのだろう、坂木は口を開けたままぼーっと白紙のスケッチブックを眺めていた。
少しした後、そこへ書き込む。
『私には新鮮な話ばかりです』
その顔には、屈託のない笑みが浮かぶ。
だがその言葉は、笑顔で掲げられたその声は、俺の胸をちくりと刺した。
「・・・なあ、坂木・・・」
意図的に、言葉を留める。
坂木は口角を上げ、子犬のように俺の声を待っていた。
「・・・坂木の買ってきてくれたこのクッキー、凄く美味しいのな」
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作者名:ゆん | 作成日時:2018年4月14日 23時