文豪さんとの選択恋愛遍歴【文スト】短編集

病弱と推理(了)happyend ページ9

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102号室。

彼女の眠っている部屋。


青年はスライド式の扉にてをかける。開こうとするも彼女の言葉を思いだし、コンコン、と二回ほどノックをし、扉を開く。




一週間前に来て以来、不運な事に地方の急な依頼が続き、彼女には顔を見せていない。───まア、目覚めたところでどんな顔で居れば良いか見当も付かないが。


だから此方に帰ってきたときは病院へ急いだ。

なにか、不吉な予感がした。



自分の勘というものほど鋭利な武器はこの世に存在しないことを自覚していた。






その勘はどうやら、





「───────！！！ッ」





当たってしまうようで。





102号室。

彼女の眠っている筈の部屋。

青年が一番望んだ元気な彼女の姿は其処には無くて。
　


しかも姿どころか、そこで人が過ごしていた形跡すら残っていなかった。


******


顔を蒼くして

僕は病院のナースステーションへ駆け出していた。


まさかもう手遅れなのか、否、若しかしたらあの後無事回復したのかも知れない。
絶対に後者であってほしいが人間は何故か悪い方向に考えてしまう。





「看護師さん！102号室の────」


彼女の状況を聞き出そうとしていたそのとき、









「あれ？乱歩さん？？」



なんて、すっとんきょうな、でも僕の大好きな声が聴こえてきた。ので振り返ると、




「─────Aッ！」



いつもの無機質な寝間着では無く私服でしかも大荷物を抱えた彼女がそこにいて、これが夢であっても嬉しくて彼女に飛び付いた。


「ッと、どうしたんですか。
それより聴いて下さい！この度私、退院出来るように成ったんです。嗚呼、正確に云えばまだ通院はしますけど。って、聴いてますか？」





前より少し心がすいたような顔で覗き込む彼女を見て、止めどなく溢れてきそうな涙を必死に引っ込ませる。格好が付かないから。




「聴いてるし知ってる。


それより僕、君にしたい話が沢山有るんだけど?」









君がまた眠ってしまわないうちに大事なことを。









「奇遇ですね、私もです。」



と、彼女は綺麗にはにかんで見せた。

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