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素直になって ページ14

「…中也」

「っ、早く無効化しろ」

僅かに目元を歪めた中也は太宰を睨む

敦は、悪いことをしてしまったかと眉を下げている

「ねえ、最後に1つだけ。私についてどう思っているんだい?」

太宰が静かな声で訊ね、中也に触れられないように、深く腰かけて後ろに下がる

「…自 殺馬鹿、ムカつく、社会不適合者、嫌い」

中也がぽつりぽつりと口からこぼす言葉に太宰は少しむっとする

大嫌いだ、視線を下に向けたまま呟いた中也は、次の言葉を紡いでいく

「俺を置いていった、書類を俺に押し付けたまま、何も言わずに、お前に俺はもう必要ない、俺はそれを咎めない、お前のすることは最終的には何時も正しい。だけど、」

だけど、

中也は瞳を揺らし、涙をためた

「それでも、お前が隣に居ない違和感が辛くて、痛くて、寒くて、…苦しい」

その一言一言に敦は胸を締め付けられるようだった
太宰には更に伝わるものがあるのか、その顔は切なそうに歪んでいる

「お前が嫌いだ。これだけ嫌いに成る程俺はっ…」

中也はガタンッと立ち上がり言葉を遮り、太宰の頬に触れた

その涙は今にも零れそうなほど溜まっているが、悟らせまいと耐えて口には手の甲をあてて顔を隠していた

「…悪い」

そう残して中也は足早に探偵社を出ていった





「中也」

中也が廊下を早足で歩いていると、後ろから名前を呼ばれた

無視をして足を進めると腕を引かれ振り返る
鼻がつんとして、涙が零れそうになる

「離せよ」

「嫌だ、ねえ中也。さっき最後に何て言おうとしたの?」

「どうでもいいだろ」

「良くない」

太宰の目は真剣そのもので、中也は言葉に詰まる

口にしたことで自覚した感情
気付いてしまったことで胸が締め付けられた
これを言ってしまえば、自分達の関係は崩れる

そんな恐怖から、なかなか口を開けない中也を促すようにその言葉を既に確信している太宰は瞳を覗き込む

「中也、言って」

その声に、後に引けなくなった中也の唇から言葉を紡ぐように吐息が洩れた

「俺は…」

不覚にも涙が一つこぼれ落ちる

「お前が…好きで…もう、どうすればいいか、分かんねえ…」

ぽろぽろと、どこまでも透明な涙が中也の頬を濡らしていく

その頬を包んで涙を拭ったのは…太宰の右の掌だった

「だざ…っ?」

中也は太宰の腕の中にいた

「好きだよ。中也」

「…は」

「君が好きだ。君を置いていったけど、それでも君が好きだ」

「…俺だって好きだ」

太宰は未だ涙を流す目尻に口づけた

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りんり - 二次オタコミュ障さん» 太中を皆の前でいちゃつかせるの大好きです笑 了解しました! (2018年9月27日 22時) (レス) id: 0f7281d890 (このIDを非表示/違反報告)
二次オタコミュ障(プロフ) - 何度目かのリクエストすみませんm(_ _)m 超バカップルな太中で、周りが見てて恥ずかしくなるくらいいちゃいちゃしてる様子を書いて欲しいです! (2018年9月27日 20時) (レス) id: 39b267f283 (このIDを非表示/違反報告)
りんり - 二次オタコミュ障さん» よ、よかったぁ…毎回本当に素敵なネタありがとうございます! (2018年9月11日 22時) (レス) id: 0f7281d890 (このIDを非表示/違反報告)
二次オタコミュ障(プロフ) - あぁぁぁ、最高です・・・っ! (2018年9月11日 20時) (レス) id: 39b267f283 (このIDを非表示/違反報告)
りんり - 二次オタコミュ障さん» 勿論です!リクエストありがとうございます! (2018年9月7日 22時) (レス) id: 0f7281d890 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りんり | 作成日時:2018年3月25日 21時

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