廿漆頁 ページ28
先代の姿を見て、静かに両手に持った蒼いナイフを構える。
「…………おじいさんは、森を殺しにきたのか?それとも治を殺しにきたのか?」
「無論、貴様も含めた全てを……と、云いたい所だが… 生憎、この身ではそれも敵わぬこと」
「ふぅん、そっか。……でも、治は殺そうとするんだろ?それで」
血がこびりついたように赤い鎌を見て、問いかける。
此処で異能力を使って出した武器を使う意味等、先程中也を吹き飛ばした蘭堂の亜空間異能がある時点で、無い。
「気付いたか、小賢しき…医師にへばりつく事にしか脳のない小僧が、いくらかましになりおった」
「治と森は回りくどくってしかたないからな。よくわからないことずっと話すんだ、俺を仲間はずれにしてな」
刹那、音もなく一直線に先代に近付いて、右手に持ったナイフを心臓めがけて降り下ろす。
だが、鎌の刃によって防がれてしまい火花が散る。
「………くくっ、殺気の片鱗すら見せずに攻撃するか……忌まわしき、死神をも殺す悪童め」
「死神なんていないだろう。いないものは殺せないぞ」
右手に握ったナイフで鎌を押さえ、左手のナイフを腹部へと投げ付ける。
寸分の狂いもなく投擲されたそれは、先代が空中に浮くことで避けられた。
にげた、にげられた。
治を殺そうとするやつが上にいる。
俺の大切なものをこわそうとするやつが上にふわふわういてる。
ああ、だめ、だめだ。治はだめだ。
他の大切なものもだめだけど、治はほんとうにだめだ。
こわすなんてかなしいことはさせられない。
中也だって、大切になりそうなんだ。
いっしょにいると安心できるんだ。
だから殺す、あいつを殺す。
殺して殺してぜったいこわされないように、うばわれないように、手足をちぎって、両目をえぐって、口も鼻もこわして、毒をもってくさらせて、火でもやして、骨をくだいて、二度と何もできないようにして、それで______
「兄さん」
治の声に、振りかえる。
治は、いつもみたいに何をかんがえてるのかよくわからない顔で地面に座っていた。
「諦めて死のう」
「………ん、わかった」
「はァ?」
ナイフを離して、治の隣におとなしく座る。
ねむくなってきたからふぁあとあくびをして目をこする。
……あれ、何をかんがえてたっけ。
忘れた。
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ロト - よみさん» コメントありがとうございます。面白いと言っていただけてとても光栄です。続きが気になる作品だったなんて本当に嬉しい誉め言葉です。ありがとうございます! (2020年1月7日 13時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
よみ - 受験頑張って下さいね。とても、面白くて、続きが気になる作品だと思っているので、早く二月になれ!っと祈りながら、更新お待ちしております。 (2020年1月6日 17時) (レス) id: 587f0ad974 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ロト | 作成日時:2019年8月1日 18時