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廿捌頁 ページ29

隣で呑気に欠伸をしている兄さんを見る。


先程、先代と戦っていた時の酷く怯えたような表情が忘れられない。


兄さんは普段、怯えることなどない。



一度だけ、死ねるかと期待して兄さんの仕事についていった事があった。

その仕事は森さんが首領になって間もない頃、多くの先代派が武器を集めているとの情報があったため、森さんが依頼したものだった。

依頼内容は本当かどうか調べてほしい、本当ならば殲滅してほしいというものだ。


調べた結果、約百名ほどの武装した先代派が居ることが分かった。


それだけでも面倒なのにその集団を率いていたのが当時の幹部だったため、死ぬほどの威力はないが、爆発してもただ痛いだけの時限爆弾を見つけた気分だった。

偽の情報でも送ってじわじわと内部崩壊させようかと提案しようとした。



しようとしたが、その前に兄さんが三日で全員殺した。


朝晩関係無く先代派だと分かった者を殺していき、幹部だった者も瞬きする暇もなく殺していた。

決してその幹部たちは弱くなかった。

生まれた時から裏の世界で生きてきたような人間がほとんどだった。


それでも、誰も兄さんを傷つけることなどできなかった。


だから驚いた。

誰と戦う時も表情を動かすことのなかった、自分より弱い人間に怯える必要などなかった兄さんが怯えたことに。


ふと、眠そうにしていた兄さんの灰色の瞳が此方に向いた。


「治、きょうのばんごはんどうしようか」


全く死ぬ気がないその発言に笑いそうになる。


「……蟹鍋が食べたいかな」


「ん、わかった。……それと、治が入るなら俺も入る」


そう言って立ち上がる兄さんに目を見開く。

見抜かれていたのか、マフィアに入ろうとしていたのを。


口角が上がる。

やっぱり、兄さんと居るとほんの少しこの世界に対する気持ち悪さが和らぐ気がする。


__

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ロト - よみさん» コメントありがとうございます。面白いと言っていただけてとても光栄です。続きが気になる作品だったなんて本当に嬉しい誉め言葉です。ありがとうございます! (2020年1月7日 13時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
よみ - 受験頑張って下さいね。とても、面白くて、続きが気になる作品だと思っているので、早く二月になれ!っと祈りながら、更新お待ちしております。 (2020年1月6日 17時) (レス) id: 587f0ad974 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ロト | 作成日時:2019年8月1日 18時

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