拾玖頁 ページ19
空気を焦がした弾丸は太宰の髪を少しかすかに揺らして通り抜けた。
「……っ、手前!何してんだ!!」
響きわたる怒号。
何故、何故弟である太宰に殺意を向けられる。
中也には理解出来なかった。
あんなにも鋭い殺意を向けられ、尚平然としている太宰も、立ち上がる白い煙を泣きそうな顔で眺める修治も。
「………………また、だな。ごめん治………」
「謝らないでよ、兄さんが銃の腕がこの上ないほどへたっぴなのは分かってるから。蘭堂さんのところに行こう」
銃を後ろに放り投げ、しばらく目を瞑っていた修治はまた何時もの表情に戻り、太宰の横に並んで屋敷へと向かう。
その何もかもが、ましては仲間を一番大切にする«羊»の中也には理解出来るものではなかった。
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「うう寒い……風通しが良くなって三倍寒い……風の当たらない土の中で、蝉の幼虫のように残りの人生を過ごしたい……」
ごうごうと燃えている暖炉を前に厚手の長外套、兎毛の耳当てと手袋を着けていても寒そうに震え、本を薪の代わりに次々と放り投げる。
「…………もふもふ…ふわふわ…もこもこ…!!」
「え……ぁ…その、太宰さん……今は…ちょっと大分寒いので…………」
きらきらと目を輝かせ、蘭堂が着けている防寒具を見詰める。
どうやらさわり心地が気に入ったらしい。
「ほうら兄さん、猫の写真だよ〜。ほらほら〜これ見といてね〜」
「おらちびっこ包帯。そこで捕まえた蝶々だ。これでも見とけ」
「……!!!!!!ん、わかった」
防寒具から一瞬で興味を写真とふわふわと浮く蝶々に移した修治を横目に蘭堂の話を聞く。
«荒覇吐»の爆発を間近で受けて生き残った、蘭堂の話を。
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ロト - よみさん» コメントありがとうございます。面白いと言っていただけてとても光栄です。続きが気になる作品だったなんて本当に嬉しい誉め言葉です。ありがとうございます! (2020年1月7日 13時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
よみ - 受験頑張って下さいね。とても、面白くて、続きが気になる作品だと思っているので、早く二月になれ!っと祈りながら、更新お待ちしております。 (2020年1月6日 17時) (レス) id: 587f0ad974 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ロト | 作成日時:2019年8月1日 18時