【文スト】太宰治の奮闘記録

水ではない ページ16

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「――失恋した」

「いつもの事じゃねぇか」



気付けば中也にそんな事を零していた


如何やって帰ってきたのかも覚えていない

大分と遠回りしたと思う、途中何処かの川に立ち寄ったのか、着ている服はびしょ濡れだった



「………今回は又、派手に振られたンだな」


ただならぬ私のオーラを感じ取ったのか、流石の中也も其れ以上は揶揄わなかった


一先ず風呂に入ってから、どかりと隣に腰掛けると



「………」


らしくもなく気を遣って何も話さない相棒



「気持ち悪い」

「あァ？」

「君に気を遣われるなら死んだ方がマシ」

「手前……」


ぴくぴくと口の端を痙攣させて青筋を立ている



「別に、一度二度振られるくらいいつもの事だから大丈夫だよ、気にしてない」

「手前嘘吐くのそんな下手だったか？」

「はあ？」

「右手に持ってンのは何だよ」

「水だけ、ど……」



怪訝に思って、先程冷蔵庫から取った水を握る自分の右手に視線を落とすと


如何した事か



「手前にはボンレスハムが水に見えてんだな」

「………」


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