【文スト】素直じゃない兄【太宰】 (ページ8)

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７.私は何だろう？※暴力ページ8

「任務ではこれ以上の痛みを伴うはずだ。

傷付くことに怯えていては、何時まで経っても任務は成功しない」

放たれた銃弾に抉られた肩を抑え、痛みに逆らった。

けれど、勝てる訳がなく、激痛が走り回る。

兄さんは、１つ溜息を漏らすと、銃口を横にスライドさせた。

銃声が響き、私の太腿に新しい傷ができた。

「うああぁッ…！！」

とうとう耐えられなくなり、視界が揺らぎ、涙が出た。

嗚咽を漏らしながら涙する私を見下ろしながら、

構成員に銃を返した。

視線は私から離さず、「もう行って良いよ」と声を掛けていた。

その声も、聞こえていなかったかもしれない。

私の思考は、痛みと恐怖に支配され、何も考えられなかった。

「さて、と…如何するんだい？

私としては、任務で役に立ってから死んで欲しいね」

嗚呼、兄さんがそれを望むのなら…

私はそれに従おう…例え、其れが正しくなくとも…

私は兄さんの為に……

「…ります」

まともな判断なんか出来なかった。

それでも、後悔はしないだろうと、何故か確信していた。

「やります…その任務、受けます…！」

ほぼヤケクソに。息も絶え絶えに。

声を張り上げた。

睨みつけるように見上げると、兄さんの顔が見えた。

その顔が一瞬だけ、泣きそうな切ない感情を滲み出しているように見えた。

だが、そう見えただけ。

幻かと思い込むくらい早く切り替わった。

うっすらと口元が弧を描く。

「うふふ…そうこなくてはね。期待しているよ」

踵を返し、歩き出す足取りは何処か重たげだ。

何故なのか…私は兄さんの望む回答をした。

期待された。兄さんは私に期待している。

なのに、何故背中が悲しげに見えるのだろう。

血を大量に失いながらも、今すぐ走って突撃し、抱き締めたいと思った。

だが、そんな事が出来るはずもなく、1人地面に伏せていた。

「如何して…如何して…？兄さん…泣かないで…」

願うように呟いた。

兄さんが泣くわけないのに。

涙1粒、1mlさえ出さないであろう兄さんが、泣くわけがないのに。

ふと視界に入った紙切れ。

任務の内容が記された資料だ。

私と一緒に地べたに張り付いている。

兄さんにとって、私は紙切れ同然。

それ以下かもしれない。

紙切れを破り捨てて上に上がることさえ出来ないのであれば…

「もう……終わりにしよう…」