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21.私の異能とは… ページ25

「A…若し君が死んでも、私は…」

何かを堪えるように間を開けた。

こんなに躊躇するなんて、兄さんが兄さんじゃないような感じだ。

「私は…妹が居た事を忘れられないだろう」

「兄さ…」

ぱっと体を離されて、さっきまであった温もりが冷めていく。

何故急に、そんな事を云ったのか判らないでいると、兄さんと目が合った。

何処までも続く深い闇に染まった瞳に、何かの感情が滲んでいた。

「…幹部、戻りましょう。体を休めなくては」

行き場も無く宙に浮いていた手を降ろし、目を逸らす。

「その前に、君に聞きたい事があるんだ」

その言葉に再び顔を上げると、真剣な表情をしていた。

次に来る言葉を待っていると、兄さんが話す前に爆発音が聞こえた。

反射的にそちらを見やると、黒い煙が上がっていた。

若しかして、また始まったのかな?戦争が…

呼吸が荒くなり、手足が震える。

また、あの屍の山を見る事になる。

不意に、視界が暗くなった。

誰かに手で目隠しをされたのだ。

直ぐに袖口から刃物を取り出し、相手の顔を突こうとするが、すんでのところで止める。

気配で正体を察知した。

「何の真似ですか、太宰幹部」

「もう兄さんとは呼ばないのかい?」

「今この状況で呼べるとでも?」

兄さんが薄く笑った。

何を考えているのか、妹の私ですら見当がつかない。

「A、足下の地面が溶けてるよ」

「え、は?溶け…?」

少し動かしてみると、ねちゃっという音が聞こえた。

「矢張り、君は異能力者だったね。触れたものを変化させる異能」

そう云われたが、すんなりと受け入れられた。

何故なら、任務の時、必ず何かが変わったからだ。

その混乱の所為で相手に隙を突かれたり、見逃してしまっていたのだ。

「私が触れても戻らないのは、きっと"血"だ」

血…つまりは、異能無効化の兄の血が流れているため、少しばかり、それさえも無効化してしまうということだ。

「でも、私が意識的に使えば…」

異能が発動する。兄さんのものだ。

地面が固くなった感覚を確認し、足で音を立ててみる。

固いコンクリートの音がした。

「君の異能は無効化される」

私を開放した後、腕を引っ張られた。

「か、幹部!あの爆発は…!」

「戦争は起こらないよ。そして、あれは中也だ」

その確信がどこから来るのか気になったが、2人は相棒だ。

理由なんて要らないだろう。

その信頼関係を、私も持ちたい。

出来る事なら…兄さんと…。

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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時

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