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19.「諦め」と「覚悟」 ページ21

思い空気が車内に充満する。

「…何時から?」

「え?」

「何時から聞かされてた?」

兄さんの声で、更に重くなる。

「えっと…今日、兄さんを奪還しに行く前、か…ら」

恐る恐る見てみると、兄さんは頬杖をついて車窓越しに外を眺めてた。

「あっそ」素っ気なく返事をした後に、また沈黙が訪れる。

嫌だなぁ…この空気。

拠点に着いたらまた殴られるのかな?

不安を抱きながら逃げるように私も外へ目を向ける。

「ねぇA。真逆、褒められないと何も出来ない…なんて云わないよね?」

凍てついた兄さんの声が耳に入ってきて、身体が固まる。

どう答えるのが正解なのか…必死に頭を動かす。

「い、いえ…そんな事ありません」

キキっと音を立てて車が止まる。

車から降りて、入口へと足を向ける兄さんの後を急いで追いかける。

眉間に何かが当たる。銃口だ。

流れる動作で見張りから銃を取り、私に向けてきたのだ。

嗚呼、どれだけ頑張っても…兄さんは私を殺そうとする。

兄さんは、私の事が嫌いで、どうしても殺したくて、理由を作るけど、首領が止めるから…。

「殺すならばどうぞ。抵抗なんてしませんから」

「矢張り判っていないね。私は君の"そういうところ"を
駄目だと云っているんだ」

兄さんの口から答えが出てきた事に目を丸くする。

「諦めが肝心とは云うけれど、君のこれは"諦め"じゃない」

「諦めじゃない…?なら、何だと云うのですか」

「その答えまで私に云わせるのかい?本当に頭が悪いね」

諦めじゃないなら、これは何なのか。

兄さんから首を絞められた時も、中原さんの手が伸びてきた時も。

私は「覚悟」と言う名の「諦め」をしていた。

「君は私の為なら何時だって死ぬ心算でいる」

兄さんは引き金を引いた。

私の後ろに向けて。

呻き声が聞こえ、誰なのか確認する為に振り向こうとしたが、それは出来なかった。

前から抱擁されたからだ。

「え、に、兄さん!?」

「あぁそう。それだよ。君が私を兄と呼ぶ限り、私は君の兄なんだ」

「そして君は妹だ」腕に力を込めながら、よく判らないことを呟く兄さんに困惑する。

「まだ居る。中也、任せたよ」

「ちっ…後で1杯奢れ」

中也さんは数人の構成員を連れて路地にかけていった。

「に、兄さん…?私は……」

「君は此処に居るんだ。離れたら殺すよ」

「ひっ…はい」

私は兄さんの腕の中で、大人しく中也さんを待つ事になった。

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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時

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