【文スト】素直じゃない兄【太宰】 (ページ20)

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１８.成長しないのは何故？ページ20

今私達は、車で拠点に向かっている。

敵に捕縛され、拷問を受けているであろう兄さんを奪還しに行った帰りだ。

あの囮作戦から数日後、助かった経緯を首領に聞いた。

『―――気分はどうかね？怪我の具合は？』

『大丈夫です。しかし、何故私は無事なんですか？』

『太宰君が生きてる者だけ回収したんだよ』

信じられなかった。

あの兄が…一体何があったというのか…。

『あの作戦で、君がまだ使えると判断したからだそうだよ。善かったね』

成程、好機を貰えたのか。

また部下として使って貰えることに、安堵した。

『ところで、A君が何時まで経っても成長しないから、私なりに考えたのだけれど…』

首領は白衣のポケットから何かを取り出すと、輝くほどの笑みで爆弾を投下した。

『太宰くんからお褒めの言葉を聞かせてはどうかと思い、録音してみたのだよ』

『……はい！？』

聞かされた結果、私の仕事の成績が上がった。

といっても、溜まった書類を片付けたら、訂正部分が無かっただけだけど。

『お前は褒められて伸びる種類(ﾀｲﾌﾟ)なのか』

『そ、そうみたいです…子供みたいですね』

衝撃(ｼｮｯｸ)で気分が沈み、じめじめしていると、中也さんは私に資料を差し出した。

『手前の兄貴が敵に捕縛された。奪還に行くぞ』

『兄さんが！？わ、判りました！』

念のために敵の拠点を調べ、兄さんが居ると予想される場所を絞った。

そして、そこから出口への最短平方根(ﾙｰﾄ)を記録した。

データを携帯に送ってから、中也さんとの待ち合わせ場所へ急いだ。

無事に目的は果たせ、脱出する事が出来た。

――が、首領が報告の後に"あれ"を聞かせてきたため、声を荒らげてしまった。

何かを不審に思った兄さんが、私の手から携帯を奪い取った。

拙いとは思ったが、時既に遅し。

携帯を耳に当てた瞬間、兄さんの表情が消えた。

拙い…非常に拙い…私も首領も拙い…。

血の気が引いていく。

「…首領、説明してくれますね？」

《あれ？太宰君！？え、何時から…》

首領の焦った声が聞こえる。

最後まで聞くこと無く通話を切ると、携帯を窓から捨てた。

「え、ちょ…！敵に見つかったら…」

「中也、壊しといて」

「面倒臭ぇことさせんな」

後ろから爆発音が聞こえた。

携帯を壊すだけでこんな音…

「ああ？付けられてんの知ってたのか？」

「当然だろ？」

成程…？敵の車が異能に巻き込まれたのかな？

しかし、今の空気は非常に拙い。