56話 ページ17
条野side
彼女に聞きたいことは沢山ある。
だが……まずは濡れた体を拭かないと。
「鐵腸さん、タオルを持ってきてもらえますか」
「判った」
鐵腸さんがタオルを取りに行く間、彼女にいくつか質問をした。
「何があったんです」
「何処に行ったんですか」
「誰かと一緒に居たんですか」
何を聞いても、彼女は何も答えない。
質問をしながら、彼女の心音も聞いた。
虚無。
虚無でしかなかった。
まるで、親しい人が死んだような_____
そういえば、"誰かと一緒に居たか"と聞いた時……微かに心音が大きくなったような。
誰かが関わっているのか……?
「条野、持ってきたぞ」
「ありがとうございます」
鐵腸さんからタオルを受け取って、彼女の体を拭く。
彼女は微動だにしなかった。
「私は彼女を執務室まで送ります。鐵腸さんはお先にどうぞ」
「……?ああ」
鐵腸さんは、首を傾げつつも帰っていった。
執務室に着くまで、私たちは何も喋らなかった。
執務室に着いたので、取り敢えず彼女をソファに座らせる。彼女は人形のようだった。
「何か食べますか」
首を振る。
でも、このまま私が帰れば、彼女は明日の朝まで何も食べないだろう。
……仕方ない。
私がここに居るか。
『……条野さんは帰ってください』
まるで、私の心を読んだように彼女は云った。
『申し訳ないし……1人にしてください』
すみません、そう彼女は頭を下げた。
……Aさん本人が云うのなら、そうする方が良いのだろう。
「……判りました。簡単に夕食を作っておきます。また、何かあれば私に連絡するように」
『……ありがとうございます』
彼女は小さく頭を下げた。
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夜半 - 好きです(突然の告白 (12月10日 12時) (レス) @page10 id: 22ab75ff6b (このIDを非表示/違反報告)
いちきちゃん(プロフ) - 滅茶苦茶大好きです (10月16日 19時) (レス) id: bbdd29e3b1 (このIDを非表示/違反報告)
りず(プロフ) - めっっっっちゃすきです (10月4日 0時) (レス) @page4 id: 188b205efb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:tonight | 作成日時:2023年8月26日 12時