捌拾壱:準備をしよう ページ35
実side
部屋に戻り、子供になってしまった二人をベッドの上に降ろしてから、俺はクローゼットや箪笥を漁った。
飯は作れる、遊び相手だって出来る、一番の問題は服だった。子供用の服なんて無ぇし、下手に着せたら転ぶ可能性がある。どうしたもんか……
「えもり〜」
後ろから虎杖の声がかかる。俺は引っ張り出していた服を手に持ちながら、『ん?』とベッドの方を見た。
「!えへっ、よんだだけ!」
『…そうか』
可愛いな?
「むぅ〜…っ」
俺の反応が気に食わなかったのか、虎杖は頬を膨らませて拗ねる。そんな可愛いことされてもなぁ…
「……えもり…」
今度は伏黒だ。もそもそとブカブカな制服を引きずりながらベッドから降りてきて、俺の腕の下を通り、胡坐をかいていた足の上にぺしょりと寝転がる。そのまま上目遣いで俺を見上げてきた。
『どうした伏黒』
「……」
伏黒はそのまま答えず、俺の胴に抱きついてくる。猫かコイツは。
『(集中できねぇ…)』
子供の二人ってこんなに可愛かったのか。二人共幼少期の話しねぇからよく知らなかったが、戻ったら聞いてみようか。
『(服はとりあえずこれでいいか…)二人共、すまないがこれを着ててくれ』
制服引きずるよりかはマシだろうと、俺は自分のグレーのパーカーを虎杖に、黒のトレーナーを伏黒に渡す。身長的にこれ一枚でも身体がすっぽり埋まるだろう。が、元に戻った時絶対下が丸出しになるから、部屋から出すわけにはいかねぇな。
服を受け取った二人はもそもそと着替え始めた。虎杖は「んしょ、んしょ…」と声を出しながらパーカーを着て、伏黒は猫が服の中に入るようにトレーナーを着る。
試しに二人を立たせてみると、赤く染まる膝小僧辺りまですっぽりと服に覆われていた。今はコレでいいだろう。
『動きづらいと思うが、ソレで我慢してくれ』
下手に子供の服を与えたら、戻った時服が大破して二人共全裸になるからな…
俺が遠い目をして考えていると、不意に伏黒が袖を顔に寄せて匂いを嗅ぎ始めた。え、臭かったか?俺ちゃんと洗濯したんだが…
「……えもりの、におい…」
ぽぽっ…と柔らかい頬が赤くなる。嬉しそうに匂いを嗅ぎながら服に埋まる伏黒の姿に、俺はその場に倒れ込んだ。
伏黒、(可愛すぎて)怖い。
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます!一気に読んで頂けるとは…!とても嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月24日 21時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして!主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました!応援してます、更新頑張ってください! (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます!とても嬉しいです…!今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性?とか話の進み方とかすっごく好みです!更新がんばってください! (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月21日 17時