散らばる星はその地で輝く -9-【短編集】

《リクエスト》女の子でも君が好き -3-【トーマ】 ページ10

フウマside

怪我をする事に躊躇いは無い。流石に死にそうな一撃とかは避けてるけど、小さな傷は大した事無いと思っている。
だってオレは一度死の淵を見た人間で、今のこの体だってまともな人間の体じゃない。怪我をしても気がついたら治ってるような体だ。

それでもこうして手当てをしてくれる兄貴には呆れ半分、嬉しさ半分の気持ちを抱いている。
意味の無い行為だと思っているけど、それでもこうして気持ちをかけてくれているのがよく伝わるから。

「全く…女の子一人を寄って集ってなんて酷い話だ！」

プンプンと怒りながら兄貴はオレの髪に櫛を通していく。居間で手当てを受けて新しい服に着替えて、今はボサボサになった髪を兄貴が整えてくれていた。

『でも相手はオレだしなぁ……』
「だとしてもさ！だって今のフウマは女の子なんだよ！？女性を複数人でボコボコにするなんて最低だ！」
『ボコボコにしたのはオレだけどね』

まぁでも、確かに普段よりは動きづらかった。腕を掴まれた時も上手く振り払えなかったし。神の目の元素力で吹っ飛ばせなかったらちょっとマズかったかも。

『(女って本当に力無いんだな……)』

仕事はできるって言ったはいいけど、この調子じゃあいつもみたいな無茶はできないな……。

『…兄貴』
「ん？何だい？」
『いつまでオレの髪弄ってるの？』

さっきから思ってたけど……なんかオレの髪整える時間長くない？

「いやぁ、折角可愛い女の子になってるんだから、ちゃんと可愛くお洒落しないと」
『いやいいからそういうの！オレ男だし！』
「でも今は女の子だよ？」
『そうだけど！そうだけどさぁ……！！』

元男に可愛いとかさ！？そういうのしても嬉しくないの！！

「え〜？だってフウマ、今すっごい美人さんだよ？」

オレの髪を弄る兄貴の声が後ろから聞こえてくる。「よし」と兄貴の声が聞こえたら、兄貴はオレの前に来てにっこりと満足気に笑った。

「うん、すっごい綺麗」
『……！』

後ろ髪を前に持ってくれば、黄色の髪は綺麗な三つ編みにされていた。いつも使っている髪紐は毛先を纏める髪留めになっていて、それも綺麗なリボン結びにされている。

『…凝りすぎ』
「まぁまぁ、そう言わずにさ？」

ぽんぽんと頭を撫でてくる兄貴がオレを見てくる。黄緑の瞳はオレの事を愛おしそうに見ているようで、何だか恥ずかしくなって目を逸した。

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