身も心も僕のものに決まってるだろ【放浪者】 ページ43
スカラマシュside
それがある事は随分と前から知っていた。今更それをどうこうしようとも思っていないし、向こうも僕をどうこうしようとは思っていないだろう。
「やぁ、お帰り」
ドラゴンスパインにある核心の傍、ファデュイ専用の大きなテントの中にある椅子に腰掛けながら手を振ると、彼は目を丸くした後クスリと笑って腰に手を当てた。
『何だ、来てたのかい?"僕"』
「当たり前だろ?お前が動けば僕にも伝わるからね」
だって僕達は同じ"スカラマシュ"という存在じゃないか。そうだろう?
ニコリと微笑んでやると、目の前の彼__いや、"散兵"はツヴェートの顔で怪しく微笑んだ。
"散兵"の存在に気づいたのは例の事件の直後、彼がアビスの策略によって暴走し、その大騒動を収めた後からだった。
いつの間にか、彼の心臓に位置する場所に雷元素を含んだ"ナニカ"が宿っている事に気がついた。それは元々ツヴェートに無かったもので、騒動の後から体内に出現したものだった。
『"雷元素の核みたいなのがある?……博士の検診ではそんなもの見つからなかったけど……"』
本人に聞いたらそう言われた。でもしっかりと、僕には彼の胸元に雷元素の存在を感じていた。
しかもそれはあの稲妻の空気のような、懐かしい気配を漂わせていたんだ。そして次第に、直感的に理解した。
あれは"僕"だ。ファトゥス第六位として、ファデュイの執行官として存在していた"散兵"の欠片だと。
いつ、どうやって入り込んだのかは分からない。でも確かにその存在は"嘗ての僕"だったものだと確信した。
あれは"散兵"から"贋作"として新たな姿を獲得したんだ。空っぽの器に等しい彼の体内で、ゆっくりと一つになって溶けていくのだろう。
「でもそれって、僕の一部が彼に溶けて一つになるのと同義だよね?」
パチンと包帯を留めてやると、彼は『そうだね』と肯定した。
それにしても酷い怪我をしたものだね。まぁ"散兵"が出てくるぐらいだから当然か。コイツはツヴェートが危機に瀕した時しか出てこないし。
『嬉しいかい?未来の僕』
「僕自身じゃないって言うのは不服だけど、まぁ」
手当てを終えた彼の素肌に触れる。公子と同じ顔で、それでも全く中身は別。そんな彼の包帯が巻かれた雪のように白い胸元に手を添えながら、少しだけ目元を緩めた。
「身も心も自分のものにしているようで、気分は良いかな」
僕の過去も未来も、その体の中に全部詰め込んでさ。僕一色にしてやりたいよ。
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ゆらぎ(プロフ) - いえいえ、全然オーケーです!!こちらこそ採用してくださりありがとうございます! (5月5日 1時) (レス) id: 8914fbacd3 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - ゆらぎさん» コメントありがとうございます!エヴァは私があまりよく知らない作品でして……申し訳ありません……。ですがシチュエーションはとても良いと思いましたので、そちらを採用させて頂きます!満足にリクエストに応えられず申し訳ありません! (5月4日 10時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらぎ(プロフ) - リクエスト受理してくれてありがとうございます!またリクエストでエヴァンゲリオンってできますか?エヴァに取り込まれた主人公組とパイロットの恋人組、みたいな、、?無理を承知ですがお願いします! (5月3日 19時) (レス) id: 8914fbacd3 (このIDを非表示/違反報告)
orchid~オーキッド~ - ありがとうございます!よろしくお願いいたします! (5月1日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - orchid~オーキッド~さん» リクエストありがとうございます!話数的に次回に回ると思いますが、書かせて頂きます! (5月1日 1時) (レス) @page50 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2024年3月8日 21時