いつかの夢を見るかの如く【魈】 ページ32
ツヴェートside
『毎日毎日よくもまぁ飛んでやって来るね?』
望舒旅館の一室。璃月の景色を見ながらモラミートを食べていれば、窓辺近くの壁に寄りかかっていた魈がチラリと視線を向けた。
「言っただろう。あの場で我はお前と契を交わしている。その契がある限り、我はお前が何処に居ようとも駆けつけるのみ」
『咄嗟に交わした約束ほど最悪なものはないな』
あーぁ、どうしてこうなっちゃったかなぁ……。俺はただの人形なんだけど。
別に怪我をしたって誰にも心配されやしない。物が壊れるのは当然の事だろう?それなのに此奴は毎度毎度俺が危ない目に遭いそうになるとやって来て助けてくる。
『(どうして其処まで気にかけられてるんだろうなぁ……)』
モグ、と肉汁溢れる肉を口にしながら考える。まぁ俺は彼とはそれなりに付き合いのある仲だし、知り合いって程冷たい仲でも無い。
でも俺、一応執行官だよ?自分で言うのもなんだけど、悪い事だってあっさりとやるような奴なわけでさ?そんな奴をどうして此処まで助けてくれるんだこの夜叉様は。
『……あのさ』
モラミートを持つ手を一度降ろして彼の方へと向き直る。金色の瞳が俺をじっと見つめる中、言葉に疑問を添えて静かに彼へとぶつけた。
『俺って君に気に入られるような事したっけ?』
確かに俺は彼と少しの間行動していた事がある。でもそれは一時的な協力関係によるもので、好き好んで行動していたわけじゃない。仕事仲間みたいな関係だった筈だ。
「……そうだな」
魈は考えるように目を伏せる。瞬きの後、彼は小さく息を吐いて再度俺へと視線を送った。
「お前は、嘗ての我に似ている。故にどうにも気になるのだ」
『……は?』
それだけの理由で、今まで散々わざと死にそうな目に遭いまくってた俺を助け続けてたのか?
『……何だそれ』
意味が分からない。どうしてそんなものが俺を助ける理由なんかになるんだ。
「理解されずとも良い」
不意に魈が俺の傍に来る。彼の指先が髪を掬うように触れて、何処か物憂げな瞳が俺を懐かしそうに、悲しげで、それでも確りとした光を湛えて俺に注がれる。
「それでも我は、お前を守るだけだ」
…何だよ、その目。どうしてそんな目で、俺を見るんだ。
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ゆらぎ(プロフ) - いえいえ、全然オーケーです!!こちらこそ採用してくださりありがとうございます! (5月5日 1時) (レス) id: 8914fbacd3 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - ゆらぎさん» コメントありがとうございます!エヴァは私があまりよく知らない作品でして……申し訳ありません……。ですがシチュエーションはとても良いと思いましたので、そちらを採用させて頂きます!満足にリクエストに応えられず申し訳ありません! (5月4日 10時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらぎ(プロフ) - リクエスト受理してくれてありがとうございます!またリクエストでエヴァンゲリオンってできますか?エヴァに取り込まれた主人公組とパイロットの恋人組、みたいな、、?無理を承知ですがお願いします! (5月3日 19時) (レス) id: 8914fbacd3 (このIDを非表示/違反報告)
orchid~オーキッド~ - ありがとうございます!よろしくお願いいたします! (5月1日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - orchid~オーキッド~さん» リクエストありがとうございます!話数的に次回に回ると思いますが、書かせて頂きます! (5月1日 1時) (レス) @page50 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2024年3月8日 21時