《リクエスト》胸の内の想いを咲かせて-3-【トーマ&神里綾人】 ページ41
フウマside
オレは気持ちを伝える事が苦手だ。それはこの妖魔の身になっても変わらない。
それでも必死で伝えようと頑張って、必死で悩んで苦しんで、そして……
『っ……』
差し出したものは、泥に塗れた2本の鳴草だけだった。
「…えっと、フウマ?これは……」
社奉行にある若の部屋。休憩中の若の元にやって来たら、其処には兄貴も居て。
本当は一人ずつに渡したかったんだけど、気が動転して、ついオレは取ってきた鳴草を何も言わずにそのまま差し出してしまった。
こうなってしまったらもう押し付けだ。どうしよう、変な奴だと思われた……っ。
本当なら綺麗な包装紙で包んで、泥を拭って、沢山の感謝を口に乗せて渡す予定だったのに。
『(何でオレって、いっつもこうなんだろう……っ)』
素直じゃない。兄貴と違って偏屈で、言葉足らずで、我だけが強い。…でもっ、
『そ、その……っ、いつも頑張ってる二人に、何かあげたくて……っ、でもオレ、何をあげたらいいのか、分からなくて……っ』
だから、だから思いつくものをと思って、取りに行ったんだけど…雨が降っていて、泥塗れになっちゃって……っ。
『………す、すみません、突然……』
こんなもの貰ったって迷惑なだけだろう。思いつきの行動程面倒なものは無いだろうし。
そう考えてしまったら、鳴草を持つ手は徐々に下へと下がってしまった。
「トーマ、花瓶を」
「はい、とびっきり上等な物で宜しいですか?」
「勿論」
温かくて優しい若の手が、そっとオレの手を掬い取ってくれた。
「こんなに土に塗れてまで摘みに行ってくれたんだね?ありがとう。お前は本当に優しい子だ」
『わ、若…っ、泥が付いてしまいます…っ!』
「気にならないとも。フウマが私とトーマの事を想って摘んで来てくれたのだから。トーマ」
「はい」
兄貴がオレの持っている鳴草を大切に取って花瓶に差す。泥を取り払われて雷元素を浴びて輝く鳴草は、花瓶の中で静かに葉を揺らした。
「立派な鳴草ですねぇ若!やっぱりオレの弟は見る目がある!」
「そうだね。…ありがとうフウマ。お前の気持ちはしっかりと受け取ったよ」
……喜んで、くれた……?
「え、え!?フウマ!?」
「おやおや」
気がついたら、目からはポロポロと涙が溢れて零れた。
『…オレ、オレッ、不器用で、戦う事ぐらいしかっ、出来ないけど…っ!』
溢れる涙が落ちていく。想いの言葉と共に溢れる涙は止まらなくて。
『二人の為に、ずっと頑張るから…っ!』
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orchid〜オーキッド〜 - 最高です!かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます!これからの活動もすっごく楽しみにしています! (12月11日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは!!天才ですね!!めっちゃうるっと来ましたよ〜!泣 はぁ!今日も頑張れそうです!更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!!ずっと応援してます!あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます!もし何か分からないことあったら教えてください! (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます!書かせて頂きます〜! (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月3日 22時