《リクエスト》夜闇に紡ぐ言の葉-2-【鍾離】 ページ29
劉斗side
何年経とうと変わりはしない。太陽は昇り、月もまた昇る。
あの日、共に璃月の地を守ると誓った丘の上に立ち、俺は静かに空を眺めていた。
「不思議なものだな。どれだけ時が流れようと、天だけは変わらず在り続ける」
隣に来た鍾離の方へと向くと、鍾離は髪を耳にかけて空を見上げた。
「こうして共に空を眺めるのは久し振りだな」
『そうなのか?』
「あぁ。お前は自然を愛していた。花を愛で、獣を愛し、空を羨んでいた。天に瞬く星々を見ては何処か懐かしむように笑んでいたのを憶えている」
……憶えていない。そんな事をしていたのか、俺は。
『……すまないな、憶えていなくて』
この言葉ももう何回言った事だろうか。徐々に消えていく記憶は、いつか彼の事も消してしまうのだろうか。
いつか、俺は……何も思い出せぬガラクタになってしまうのだろうか。
『……っ』
嫌だ。
「劉斗……?」
『何故、何故、俺は……っ』
何故俺は、忘れていくんだ……っ
生まれた瞬間も、彼との思い出も、共に戦った仲間の顔も、もう、何もかも思い出せない。
思い出せないんだ。もう、大切だった約束も、思い出も……っ
『俺は、何で……こんな……っ』
どうして俺は、鍾離が苦しむ事ばかり……っ
「…劉斗」
温もりが俺を包む。溢れる炎を包むように、優しい岩の力が満ちていく。
「気にするな。お前はお前だ。例え忘れてしまっても、俺が何度でも教えてやろう」
優しい手が髪を撫でる。静かな丘の上で、彼の声だけが流れていく。
「お前は俺の人形、俺の子、俺の友、俺の師、そして…お前は俺であり、俺が唯一愛した存在だ。そう泣いてくれるな、友よ」
……嗚呼、お前は優しいな、モラクス。
月明かりが俺達を照らし出す。彼の腕の中でふと空を見れば、黄金の月が輝いていた。
『……今宵の月は綺麗だな』
「確かに。だが、お前と見るから綺麗に映るんだ」
鍾離はそう言って俺の手を取る。指を絡め、しっかりと手を繋いで、
「お前と見るから、綺麗なんだ」
噛み締めるように呟かれた言葉と共に、彼は空を見上げた。
「……劉斗」
『何だ?』
「また見に来よう。こうして二人で月を見に。今度は旅人や、皆を連れて」
『……ふん、お前がそう言うなら付き合ってやらん事もない』
「はは、相変わらずだなお前は」
繋がれた手は、いつもより強く握られている。その力強い手に応えるように、俺も彼の手を握り返した。
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orchid〜オーキッド〜 - 最高です!かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます!これからの活動もすっごく楽しみにしています! (12月11日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは!!天才ですね!!めっちゃうるっと来ましたよ〜!泣 はぁ!今日も頑張れそうです!更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!!ずっと応援してます!あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます!もし何か分からないことあったら教えてください! (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます!書かせて頂きます〜! (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月3日 22時