《リクエスト》髪の一房すら惜しい-4-【鍾離】 ページ26
鍾離side
それは夕食を二人で楽しもうと、劉斗を食事の席に誘った時だった。
「…?どうした」
『ん?』
「髪が短くなっているが」
席について手を合わせていた彼が己の髪に触れる。今朝まで揃いの髪留めで留めていた長い髪は、いつの間にか綺麗に短く切り揃えられていた。
今日は確か公子殿との戦闘の約束を果たしに黄金屋まで行っていた筈。まさか彼に……?
『公子殿との手合わせの後、旅人達を交えて万民堂で軽食を食べに向かったのだが、道中で旅人の髪と俺の髪が絡まってしまってな。鬱陶しいので俺が髪を焼き切ったら、何故か慌てふためかれて、公子殿が髪を整えてくれたんだ』
……そう、だったのか。……すまない公子殿……。
さっぱりした短い髪になってしまった劉斗は『騒ぐ事でも無いだろうに』と天枢肉に箸を付けながら溜息をつく。災難だっただろうな、後で好みの茶でも淹れてやろう。
「だが新鮮な経験ではないか?お前は生まれた時から俺と同じ。髪の長さすら同じだっただろう?初めての短い髪はどうだ?」
『ふむ……通気性が良いのと、洗う時便利だと思う事以外特に何も思わないな。強いて言うとすれば…』
彼は箸を置き、少しだけ寂しそうな笑みを浮かべて手を伸ばす。俺の髪にそっと触れると、ふっと声を漏らして口を開いた。
『お前と揃いではなくなってしまったのだけが名残惜しいな』
………。
「俺も切ろう」
『駄目だ』
「何故?」
彼は手を離して、静かに微笑みを湛えたまま目を伏せた。
『お前の髪は気に入っているんだ。毛先にかけて黄色く色づくお前の髪は、どんなものよりも美しい。そう簡単に切ってくれるな』
…それはお前の髪にも当て嵌まるのだが。
毛先にかけて赤く色づく黒茶の髪。まるで熱を帯びた溶岩を彷彿とさせる髪を、俺がどれだけ愛でていると思っているんだ。
「分かった。だが次から気をつけてくれ。俺はお前を髪の一房まで愛しているのだからな」
『……!…っはは、神の寵愛は毛の一本まで行き届くか』
「当然だ。お前は俺の唯一なのだから」
そう言って笑んでやると、劉斗は少しだけ頬を赤らめてすと視線を外した。
「はは、照れたか」
『煩い』
モグモグと料理を口に運ぶ劉斗は愛らしい。少し拗ねたように頬を膨らまして食事をする彼に愛おしさが込み上げる。
ふむ…怪我も無いのなら後でたんと髪の短い彼を愛でるとしよう。俺にとっても短髪の彼は初めて見るからな。
「(髪が切られたのは残念だが、まぁ…偶には良いか)」
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orchid〜オーキッド〜 - 最高です!かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます!これからの活動もすっごく楽しみにしています! (12月11日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは!!天才ですね!!めっちゃうるっと来ましたよ〜!泣 はぁ!今日も頑張れそうです!更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!!ずっと応援してます!あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます!もし何か分からないことあったら教えてください! (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます!書かせて頂きます〜! (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月3日 22時