散らばる星はその地で輝く -5-【短編集】

《リクエスト》印に刻む愛の意味-5-【ディルック】 ページ20

ディルックside

フラッドが酒を飲んでしまった。
僕と彼がエンジェルズシェアで働いていた時、僕が少し席を外していた間にガイアが彼に酒を飲ませたらしい。

「"お前もバーテンダーなら酒の味ってのを知っておかないとな"」なんて都合の良いことを言って飲ませたのだろう。真面目で優しい彼の事だ、確かにと納得して口を付けてしまったのだろう。

で、そんな彼は今、店仕舞いをした店内のカウンターに突っ伏して伸びていた。

「フラッド、大丈夫かい？」
『んへ……？』

軽く肩を揺すって声を掛けても、顔を真っ赤にしたままふわふわした声しか出さない。僕以上に酒に弱いみたいだ。

「(弱ったな…。ワイナリーに帰ろうにも彼をおぶって帰るのは僕も厳しい…)」

彼もそれなりに体重があるしな……。酒が抜けるまで寝かせておいた方が良いかもしれない。
なら二階の休憩室に彼を暫く寝かせておこう。店の掃除も片付けも済んでいるし、少し居座っても問題無い筈だ。

「フラッド、一度休憩室に行こう。そのままじゃ帰れないよ」

彼を起こして両手をとる。椅子に座ってぼんやりとする彼が僕を見た時、

『えへへ……でぃるっくぅ……』
「……！」

ちゅっと、鼻にキスをされた。

「フ、フラッド…っ、ちょっとっ！」
『ん…好き、好き……♪』

こ、こら、止めるんだフラッド…！
鼻だけでなく瞼にまでキスをされる。彼は酔うとキス魔になるのか…！？ひ、人前で飲ませないようにしないと……。

「……は」

そう思っていたら、彼の瞳が真っ赤になっている事に気がついた。

ガリッ

「〜っ！？」

彼が僕の喉に噛み付いてくる。ブチリと皮膚が裂ける音がして、痛みが喉に走った。

「っ……フ、ラッド……ッ！」

ぐっと両肩を掴んで引き剥がそうとしてもびくともしない。痛みに耐えていると彼は口を離してべろりと傷から溢れる血を舐め、わざとらしく音を立ててキスをしてきた。

『ディルック…』

彼が僕を抱き寄せる。腰に添えられた手が尻を撫でてくる。

「ま、待ってくれ、此処は店だから…っ」
『そんなの関係………』
「……フラッド…？」

………寝、た…？

「………はぁ〜……」

ガクリと項垂れた彼を抱き留めて立ち上がる。寝てしまった彼を二階の休憩室に寝かせて、彼が起きるまで悶々としながら僕は健気に待つ事になった……。



《瞼・鼻・喉へのキス…強い憧れ・大切にしたい・強い欲求》

《主人公組が恋人の特定の場所にキスをする》orchid様、リクエストありがとうございました！

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