炎は消える事無く【鍾離】 ページ13
鍾離side
フォルファクス。俺の愛した人形にして、あらゆる生命を焼き尽くす溶岩の槍。
俺と同じ姿を有し、その手に持つ槍で魔物を焼き殺し、温かな炎で人々を守ったもう一人の"岩王帝君"。彼の功績は俺と同一視され、名すら挙がる事無く俺の伝説として残されている。
その性格は思慮深く優しい。人に知恵を授け、共に大地を耕し、豊かな土地と暮らしを与え支えた、慈愛の神。
そして当時武神として冷淡な態度を取らざる負えなかった俺に、生まれて間も無く心すら無かった俺に、心とは何かを教え育てた唯一の存在。
『いやぁ、戦時中に受けた呪いの影響だろうが、まさか遠い先の世に居る俺の器と繋がってしまうとはな』
混乱する公子殿から彼を引き取った後、俺はひとまず璃月港を案内した。
広がる海を前に目を輝かせ、人で賑わう町の中を歩き回り、楽しそうに笑って人に話しかける。周囲も驚きはしたものの、滅多に話せない劉斗との会話を楽しんでいるようだった。
『それにしても美味い茶だ。こんなに美味いものをお前はいつも飲んでいるのか?』
「あぁ。今の世では俺も一人の凡人だ。すっかりこうして茶を飲み、講談を聞くのが板に付いてしまった」
和裕茶館で講談を聞きながら彼を見る。いつものような仏頂面ではなく、心の底からこの状況を楽しんでいるかのような表情に、俺も自然と笑みを浮かべた。
「懐かしいなぁ……。当時はお前にあまり構ってやれなかった…。此度こそはと思いお前を愛でているが、お前のように中々上手く出来なくてな」
『俺からしたらお前がここまで丸くなった事に驚いているんだがな。憶えているか?バルバトスがちょっかいをかけた時の事を』
「あぁ、奴の突風で髪が僅かに切れたので、俺が腹いせに隕石を落としてやった」
『あの時は流石に肝が冷えたぞ。その後も彼が俺に泣きついてくる様を見て串刺しにしようとするわで、どれだけ俺がお前を宥めるのに必死だったか……』
そんな事もあったな…。……あぁ、実に懐かしい……。
『そうだ、夜叉の皆は息災か?今世にも居るのだろうか?』
………。
「……あぁ、元気だとも」
『そうか、それならば何より』
彼は優しく微笑む。そんな彼に、俺は事実を伝えるのを躊躇った。
きっと彼が先の事を知ればより無理を強いるだろう。それで劉斗の摩耗が進んでしまったら…それだけは何としても避けねばならない。
「(すまない友よ)」
お前の描く夢は、叶う事の無い夢なんだ。
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orchid〜オーキッド〜 - 最高です!かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます!これからの活動もすっごく楽しみにしています! (12月11日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは!!天才ですね!!めっちゃうるっと来ましたよ〜!泣 はぁ!今日も頑張れそうです!更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!!ずっと応援してます!あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます!もし何か分からないことあったら教えてください! (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます!書かせて頂きます〜! (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月3日 22時