参拾壱:今後の課題 ページ32
虎杖side
聞いた時、背筋がゾクゾクした。
俺と同じ声じゃなくて、男の声でも甘いちょっと高めの声。それが榎森の口から出たんだ。
『…だ、駄目だったか?』
不安げな声もなんかこう、ゾワゾワする。
甘ったるいその声を聞くと、心臓が早くなるのを感じた。
「アンタ…そんな声だったのね〜…」
釘崎が興味深げに頷く。ハッと我に返った俺は、思わず榎森の手を握っていた。
「すっげぇ!それが本当のお前の声なのか!?めっちゃイイ声じゃん!」
『い、虎杖…「何かさ、めっちゃイイ声だな!そんなにイイ声なら元の姿だってめっちゃイケメンなんじゃね!?」その前に距離が近いぞお前』
あ、悪ぃ!
さっと離れると、榎森はホッと安堵の溜息をついた。
『これで少しは区別がつくだろ。姿はガスマスクでどうとでもなるから、気長に戻すさ』
…へへっ。
『?どうした虎杖』
「いや、会話できるっていいなと思ってさ」
前まで無言だったからさ、こうして返事が来るのすげー嬉しい。
「それに、こんなに話してくれるなんて思ってなかったっつーか…ちゃんと興味持ってくれてたんだなって嬉しいっつーか……」
何か、はずかし…っ。
頬を掻きながら言うと、「何照れてんだバカ」と伏黒に頭叩かれた。めっちゃ痛ぇ!
『…ずっと見てたからな』
そう言って榎森がフッと笑みを浮かべた。
『こうして話したいって、ずっと思ってた。だから…そうだな。俺も話せて嬉しいよ』
『照れるな…』って小声で呟く榎森。
…何だろう、今猛烈に榎森がめっちゃ可愛く見えた。俺の顔なのに。俺の顔なのに!
「俺達もお前の事を知りたい。コトリバコの事も、お前の事も、俺達に話してくれ」
伏黒がじっと榎森を見つめて言う。俺も同じだ。いや、きっとこの場に居る三人とも、榎森の事が知りたい。
『あぁ、分かった。飽きる程聞かせてやる』
榎森はそう言って、今まで聞いた事も無いような嬉しそうな声を返してくれた。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時