参拾:声の問題 ページ31
釘崎side
「はぁ〜?」
任務から戻って教室に来てみれば…何野郎二人でぼけーっとしてんのよ。
上の空な二人の頭を叩いて事情を聞いてみれば、二人共一つの話題で頭がいっぱいな事が判明した。それが、
「マジで榎森強かったんだって!こう、バーって斬っちゃってさ!」
「それに目が凄ぇ綺麗だった」
「な!めっちゃ綺麗な紫色だった!宝石みてぇなさ!」
「何が悲しくて男の目に見惚れなきゃいけないんだよ!!つーか二人共目に惚れたのか!?ソイツの人柄でも何でも無く!?普通は中身に惚れるんだよ馬鹿か!?馬鹿なのかっ!?」
そう、榎森の話。コイツらは一体任務先で何をやってきたんだよ…!
「でも、目だけじゃない。アイツは普通に良い奴だったよ」
突然静かになった伏黒の言葉に、ちょっとだけ落ち着きを取り戻す。
そうかそうか、じゃあ私にも紹介してくれよその色男をよぉ?
「「あ」」
「あ゛?」
二人が私の後ろを見て固まる。
習うように振り返れば、丁度廊下を歩くガスマスクが視界に入った。
「おー榎森、ちょーっと面貸せ♪」
『……おう』
お、虎杖の声。話せるようになったのは本当みたいね。
恐る恐るこっちに来る榎森に笑顔を向けながら、近づいてきたソイツのガスマスクを剥ぎ取った。
『っ!…何するんだよ』
「うっっっわ、マジで同じ顔だ」
芋くさい顔がもう一個増えたってカンジ。声も一緒だし、ガスマスク無いと見分けつかないじゃない。
で、肝心の目は…
『……?』
………確かに、綺麗ね。アメジストみたいに澄んでいて、淡い紫とか濃い紫とか、たくさんの色が入ってる。
「目の綺麗さは認めてやらんでもない」
「だろ!?目綺麗なんだよ榎森は!」
「はしゃぐなそこの男子!」
元気に話す虎杖に一喝して、目の前で何だ何だと戸惑うその頬を両手で挟んだ。
「いいかよーく聞け!この紅一点野薔薇様を差し置いてイチャイチャする事は私が許さん!私を愛でろっ、崇め讃えろ!」
『くぎじゃき、かおもむにゃ…っ』
「そして声!声どうにかしろ!虎杖と同じだと気色悪い!」
『んんむぅ〜…』
「可愛い声を出すな!」
パッと手を離すと、『頬が溶ける…』と榎森は両頬を手で押さえる。溶けやしないわよこんぐらいで。
『…声変えればいいんだな?』
小さく呟いた榎森が喉に手を添える。時折『ん゛っ』『ゲホッ』と声や咳を漏らしながら少し黙った後、スッと手を離した。
『…これでいいか』
「「「……は」」」
その声は一転して、全く違う声になっていた。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時