🖤仕事見学なんて初めてだよ ページ33
エースside
『来るなら来るって言ってくれればよかったのに』
休憩時間になって薔薇の庭に来た僕は、ジャックが開いたお茶会の席で紅茶を1口飲んだ。
まさかジャックがダルを連れてくるなんて思わないじゃないか。あー…怖い顔見せちゃったよ、もー……
「エースはいつもあんな感じでお仕事してるのか……?」
『うん。僕の仕事は処刑だからね。薔薇の管理も城内の監視もしてるけど、それはジャックがしてくれるから楽なんだ』
ピースをして笑うジャックを見つつ、近くのクッキーを手にして食べる。サクサクしてほんのり甘いクッキーは、紅茶にピッタリなんだ。
「ね、言ったろ親友?エースは仕事中は笑わないって!」
「た、確かに……」
『え、まさか僕が笑顔がどうかを確認するためだけに来たの?』
嘘でしょ暇過ぎない?ジャックが休暇なのは知ってるけど、流石に暇過ぎないか?
「でも、あんなに理不尽なんだなぁ……」
ダルの言葉に紅茶のカップを静かに置いて、僕は『まぁね』と答えた。
『裁判にかけられるということは、ギロチンに首をかけたのと同じさ。あの場では処刑されない方のが珍しいよ』
「じゃあ、処刑されなかったこともあったのか?」
『あるよ。ジャックが女王様への貢ぎ物であったハートのチョコを食べたって罪』
「あー!覚えてるぞそれ!チェシャ猫が僕を困らせようとしてわざと食べたやつでしょ!」
『そ。しかもそのチョコは保管室じゃなくて台所に出しっぱだったから、ネズミが運んで行ってしまっていたって話。あれは調理したトランプが首刎ねになったよね』
プンプンと怒るジャックを見て、ダルは「大変だったなぁ親友〜!」なんて笑っている。本当に心配せずに笑うところがヴィランらしいな。
「そっか、エースもジャックもあんな感じで仕事してるんだなぁ…」
しみじみと呟くダルに、僕は『大変だよ』と返してクッキーを勧める。1枚手にとって食べた彼は、ニッと笑顔を向けてきた。
「じゃあ、寝る時間まで僕も手伝うぞ!」
「お!やってみるかい?」
「うん!処刑は無理だけど、薔薇塗りなら沢山できるぞー!」
『じゃあ三人で薔薇の色塗りでもしようか』
「やったー!」
休憩時間ももうすぐ終わる。僕達は薔薇の色塗りの支度をして、その後服が真っ赤になるまで薔薇の色塗りに励んだ。
仕事は生きるのと同じぐらい自然にやることだ。でも皆でやると、こんなに楽しいんだね。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時