❤修復作業も楽じゃない ページ22
ジャックside
談話室の片付けを皆に任せて、僕は自分の部屋でエースから手当てを受けていた。
抜けたとは言えど強力な魔法の残滓が残ってて、傷の治りが悪くなってる。だから僕達の世界のペンキで塗り直すことにしたんだ。
『ジャックのペンキの配合リストはこれ?』
「そうそう。その紙で合ってるよ」
僕達トランプ兵のペンキは特殊だ。意志を持つ魔法を維持する為に、魔力のある材料を使って作られたペンキで1枚1枚塗られて兵が出来ていく。でも僕とエースみたいな特例はまた別のペンキで塗られてるから、直すのも大変なんだ。
『笑い鳥の涙にイカレ蛙の目玉?…ジャックのペンキってへんてこなのばかりだね』
「あははっ!だからこそ皆を楽しませるエンターテイナーで居られるんだよ」
僕のペンキに使われてる材料は皆おかしいものばかり。だから気が狂ったような楽しいことをたくさん思いついて実行できるんだ。
棚から材料の瓶を出すエースを見ながら椅子に座って足をプラプラさせてたら、『足ぶつけたら悪化するぞー』なんて言われちゃった。手に持つバケツには赤いインクがたっぷりと入っていて、エースはその中に材料をボチャボチャ入れていく。まるで紅茶に入れる砂糖みたいだなぁ。
「エースは材料少し違うよね?」
『うん。僕は狂わず時計の針の粉と、ハリネズミの毛が入ってるよ』
だから僕と違って真面目なのかなぁ。同じペンキで塗ったら、エースも僕みたいなエンターテイナーになるのかな…?
『変なこと考えてるだ、ろ!』
「わぁぁあ!?いきなり塗らないで!!」
沁みる!沁みるって!!今は人の体だから痛覚ってやつを感じるのに!
裾を捲られてベチャリと素肌に塗られるペンキが沁みて涙が出そうになる。何とか堪えて塗り終わるのを待って一通りペンキが傷を覆うと、やっとハケが僕の足から離れた。
『これで良しっと……』
塗られたインクが足に染み込んでいく。真っ赤なインクが肌と同じ色になって消えていくと、新品のように傷が消えていた。
「うぅ…修復作業はやられる側だと嫌だよね…」
『意外と沁みるからねぇこれ。仕方ないんだけどさ』
バケツとハケを消して僕の足を触るエース。僕はじっと彼を見て、おもむろに足を上げてみた。
『…!』
椅子に座ってるから僕の足はゆっくりと彼の顎に添えられる。…わ、ちょっとこの体勢良いかも。
『…ジャック〜?』
「あはは、ごめんごめん」
ペシッと叩かれた足を下げて、僕はズボンの裾を元に戻した。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時