ハートのトランプは幸せな夢を見る (ページ21)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:7,778 hit

🖤だって僕の好きな人だからページ21

エースside

ジャックが僕の上着の袖をしっかり噛んでいるを確認して、溶けかけている足に刺さった棘に手をかける。あの薔薇の棘、普通にしてる分には小さいけど、飛んでくると杭ほどの大きさになって深く突き刺さるんだ。

『痛かったら思いっきり僕にしがみついてよ…っ！』
「っ…」

頷くジャックの顔はもう半分ほど赤いインクで見えなくなってる。気持ちも沈んで魔力だって漏れ出しそうな中で、必死に堪える彼の目は負けじと輝いていた。

『ダル、足押さえてて』
「わ、分かった！」

ぐっと両手でジャックの両足首を押さえるダルを見て、僕は『せーの！』と声をかけて棘を引っ張った。

「っ～！！！」

途端に足をばたつかせて痛みに暴れまくるジャックは、僕の腕を凄い力で掴んだ。ギシ…ッと骨が軋む音が聞こえて、掴まれた痛みに僕もぐっと歯を食いしばりながら、反対の手で持った棘をさらに引っ張る。深く突き刺さった棘は中々抜けなくて、声を漏らして暴れるジャックを押さえるダルも必死で体重をかけて足を押さえてくれていた。

『(マルフィの時と大きさも強度も違う…っ)』

赤いインクが顔に飛び散る。一度棘を握り直してまた引っ張ると、ズルリとインク塗れの棘が足から抜けた。

『ぬ、抜けた…っ』

ほっと息を吐く。ジャックも魔力漏れが少しずつ収まって、溶けかかった体もゆっくりと元に戻っていく。ダルと顔を見合わせて「『お疲れ…！』」とハイタッチしてから、ジャックの口から上着を外してそのまま足の傷の手当に使った。

「ごめん…っ」
『謝ること無いよ。むしろいきなり襲われて棘2本は軽いもんさ』

暴走する前に抜けたのも大きかった。きっとあの薔薇は成長するんだろう。成長するってことは魔法も強くなるってことで…もし魔法がもう少し強かったら、今頃ジャックはマルフィみたいに暴れてたはずだ。

『流石ジャック。あの棘の雨をこの程度で済ませるなんて、僕も鼻が高いよ』

そう言って笑うと、ジャックはぎゅっと僕に抱きついてきた。

「…怖かった」

その弱気な言葉にびっくりして、そりゃそうだよね…って思ってから、僕はぎゅっと優しく抱きしめてあげた。

『ダルもぎゅーってしよ！ほら！』
「！いいぞ！えーいっ！」
「痛たたたたっ！？」

ドーンっとぶつかってきたダルも一緒にぎゅーっとハグして、騒ぐジャックを見て微笑んだ。
僕の好きな人だから、笑顔で居てほしいんだ。