�供タ深造了弔蟾�/７ ページ13
「嫌いになれたら、もう少し楽だったでしょうけど」
彼女が座る位置を横にずらし、広いソファに空白を作る。彼女は隣に座るよう司に促した。
縁を絶とうとする相手にしては親切すぎる行動に、司の胸には一抹の疑問が過ぎった。腰を下ろしながら、司は彼女の隣に自分以外の架空の男が座ることを想像する。――いやだ、と思ってしまう。
「他の誰かのものにならないで」
凛と咲く声に痛切な願いを込めて、朝露の儚さで落ちた。混ざり合わないはずの芯ある気強さと幼気な哀訴が同居している。
「⋯⋯と願うのは、流石に過ぎた我が侭でしょうね」
司は顔にあえかな花を咲かせた。
とうに頬の温もりは離れたはずなのに、彼女の身体は記憶に刻んでいたかのように熱が蘇っていく。無垢な願いとはかくも恐ろしい。彼が王と呼ばれるならば、献身する臣下として願いを叶えてもらいたいと思わせる力がある。
「普通の恋がしたいと言うのなら、私がそれを捧げます。ですから、考え直してはいただけないでしょうか」
チェスにおいての戦術でこんな言葉がある。キングは戦う駒だ、使え。司は戦う王であり、守る騎士であった。彼女の願いを受け入れ、二人の関係を守る。それが彼なりの戦い方だった。
「そこまでしなくても、私よりも素敵なひとはこの世にたくさん居るのに」
「そんなことはありませんよ」
膝の上で組んだ手に力を込めながら彼女が呟いた。自分は言えなかった否定の言葉をそのまま口にした司に、彼女は力なく笑んでみせる。
「司さんが自ら選んだ相手ならまだしも、私はそうじゃない。そんな私があなたの活動を狭める原因になるのは嫌だったの」
その言葉の重力はため息の儚さでできていると錯覚してしまいそうな独白を彼女が吐いた。
朱桜司はその若さにしてKnightsを率いる国民的なアイドルだ。騎士を冠するユニットの彼らはビジュアルを強みとしており、特に女性からの支持が厚い。待ち行く少女達が足を止めて街頭ＣＭやポスターに輝かしい瞳を向ける姿を彼女は幾度となく目撃してきた。少女達と同じように映像の彼らから視線を地上に下ろした時、ショーウィンドウなどに映る自分と見比べては居た堪れない気持ちになる。
いつか彼らと彼女達との間に結ばれた信頼を壊してしまうのは、明日の自分かもしれない。
「あなたが大切にしているものを私のせいで失ってほしくなかった」
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夢現(プロフ) - Mashiro Lioさん» Mashiroさん、コメントありがとうございます。彼は押せる！と思いながら楽しく書いたので大変嬉しいお言葉です！笑 Edenの誰かということで、1つ考えていたものを書き起こそうと思います。時間は空くと思いますが、誰かを予想しながらお待ちいただけたら幸いです。 (2022年8月17日 13時) (
レス) id: e5620f0a3d (このIDを非表示/違反報告)
夢現(プロフ) - よこたんさん» よこたんさん、コメントありがとうございます。嬉しい感想に他作品まで読んでいただけて感謝の念でいっぱいです。一彩くん了解しました。短編などで良ければぜひ書きたいと思うので、時間は掛かりますが暫しお待ちいただけたらと思います！ (2022年8月17日 13時) (レス) id: e5620f0a3d (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - 遅くなりましたが、完結おめでとうございます！最後の最後でいけいけ押せ押せな司くんが最高すぎて、ものの見事にやられました笑。今後もしネタがありましたら、Edenの誰かでお1つ書いていただけたら嬉しいです！可能であればご検討のほどよろしくお願いいたします。 (2022年8月17日 0時) (レス) @page20 id: 0346f68d04 (このIDを非表示/違反報告)
よこたん(プロフ) - コメント失礼します。夢現様の他の作品も拝読させて頂きました。どの作品も表現の仕方が素敵でアイドルたちそのもの、といった感じですごくすきです、、個人的にひいろくんが好きなのでひいろくんのお話読みたいです。 (2022年8月16日 21時) (レス) @page20 id: 53944d66fe (このIDを非表示/違反報告)
夢現(プロフ) - Mashiro Lioさん» Mashiroさん、コメントありがとうございます。真っ直ぐさは彼の魅力の一つだと思うので、それが引き出せていたのなら私としても嬉しい限りです。最後までしばしお付き合いいただけたら幸いです！いつも応援ありがとうございます。今後も精進いたします！ (2022年8月3日 16時) (レス) id: e5620f0a3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢現 | 作成日時：2022年7月14日 19時
