口外 ページ8
「サイコの他にソシオって人がいるんだ…サイコが顔出して司会進行する役、ソシオが放送機材の管理や操作役…
2人が所属してる組織は魔界放送局…俺らが生活してた世界のものでは無いよね…」
"魔界放送"という言葉は、サイコ自身が、全員が耳にする放送で口にしたことがある。
私達がこのゲームに参加している理由も、魔界放送の抽選で選ばれたかららしい。
「裏切りゲームは、"ウラギリゲェム"って番組のコーナー…番組の顔出しはサイコと参加者のみ。則って、ソシオの顔は俺も知ーらない。」
この番組は…私達の不安は、本当に何処かで放送されているんだ。
六原君は嘘を吐かない。やはりサイコと似ている。…2人とも、何故か歪んでいる。
「それにしても…魔界放送なんて名前だし、魔法だか魔術だか使えると思わない?」
独り語りを承知したように、六原君は楽しそうに話し続ける。相変わらず怠そうな雰囲気は抜けないけど、それに生き生きとした空気を被せたような。
兎に角、今私達に危害を加える気配は無い。サイコも黙っているということは了承しているのだろう。
「散々に煽ったけど、彼女らが魔法や魔術の類いを見せることは無かった…だから、ただ使わないのか、"今は"使えないのか。」
今は…か。それにしても、今以前にサイコ達が魔法や魔術を使ったことがあっただろうか…
「そう言えば…僕達が拉致される直前、窓のヒビが勝手に直ったね。あと、何処からかきつい香りが来た。」
千山君の声で、意識がはっきりと今に向く。そうだ、私が作った窓のヒビを直されたんじゃないか。
言われてみれば、もしかすると私達はその出来事によって、サイコ達への恐怖を感じたのかも知れない。
「そーそー…魔力切れかなー…?」
放送前の、独特な音がした。プツン、と短い音の後に無機質な明るい声が響く。
…という予想を裏切り、六原君の声が確かに響く。
「もしくは、気付かないうちに使われてる…とか?」
気付かない?
私にとって魔法や魔術と言えば、炎や水や光…物理的なものが基本で、然って気付くのが当たり前だと思っていた。
気付かないということは、例えば…精神に干渉するものとかだろうか?皆が皆何かを考えているようで、滞りそうな空気を聞き慣れない咳払いがつんざいた。
『…六原君! 誰が口外していいと! 』
「えー、言い掛かり…口外するなとは言われてないしー…」
…サイコは、"何か"に焦っている気がする。声に感じたことの無いものが滲んでいる。そうだな、最近のもので例えるなら。
今朝聴いた、一野さんの声に滲んだ"恐怖"かな。
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