茜雲 【Y】 ページ7
横尾先生は、冷たい。
正確に言うと、表面上は優しいけど、心の底が冷たい、というか、心の内側を絶対に見せてくれない。
「横尾先生」
そう呼ぶと。
「どうした、桐島」
そう言って笑ってくれる。
「この、エンドウマメの遺伝のところ、よくわからないんですけど」
担当の生物のことを聞いたら。
「ああ、優性遺伝と劣性遺伝ね。図に書いて考えるといいんだよ」
ものすごく丁寧に教えてくれる。
私は先生の説明を聞いてるフリをして、今日も先生の観察をする。
伏し目がちになると、眼鏡の奥の切長の目はまつげが長い。
図を書いてくれる手は細くて骨張ってる。
先生は目線をノートに落としたまま、少し笑う。
「お前、聞いてないだろ」
「……聞いてますよ」
「じゃあ今までのとこ説明してみろよ」
「緑でシワのあるエンドウマメが優性で、黄色で丸いのが劣性で、生まれた時から優劣が決まってる、って話ですよね」
「微妙に違うわ」
そう言って、ノートを丸めるとぱこん、て頭をたたかれた。
「説明聞いてない生徒に教えてるほど暇じゃないんでね」
そう言って、立ち上がろうとするから、先生の白衣の裾を引っ張る。
「……横尾先生、私。先生のことが、好きです」
4月に教室に入ってきた先生が。
担任の横尾です、って言った時から。
たぶん、その時からずっと。
「ごめん。生徒は無理」
だけど先生は何の迷いもなくそう言って。
その声はびっくりするくらい冷たかった。
「1ミリも嬉しくない?」
「1ミリも嬉しくない」
「ぴちぴちの女子高生だよ?」
「生徒をそういう対象で見るわけないだろ」
早く帰れよ、って笑って先生は行ってしまう。
だけど笑った先生の目は全然笑ってなくて。
でもそんな先生の冷たいところも、好きだって思う私はだいぶやばいのかも。
「振られてるし。だっせ」
振り向いたら、玉森くんが後ろのドアからのぞいてた。
「玉森くん!」
玉森くんは二年連続で同じクラス。
男子の中ではまあまあ話す方だった。
「盗み聞きするなんて悪趣味…」
「だったら教室なんかで告んなよ」
「ねえ、玉森くん」
「なに?」
「男の人ってどうされたら嬉しい?」
「どうって…」
「横尾先生は、どうしたら私のこと好きになってくれるんだろ。
何かアドバイスしてよ」
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ニイナ(プロフ) - あやかさん» こんな後味のあまりよろしくない話まで読んでくれたの😂この先どこまでも落ちてほしいです(願望)コメントはいつもらっても嬉しいです、ありがとうです♪ (2021年9月24日 20時) (レス) id: 9453ebaee9 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 北山さんのお話、禁断ですがこの先が気になる〜(//∇//)(コメント連投ですいません) (2021年9月24日 12時) (レス) @page22 id: d1d73bb006 (このIDを非表示/違反報告)
ニイナ(プロフ) - 深雪さん» 深雪さんがこのシリーズ好きだって言ってくださって本当に嬉しかったです!深雪さんは誰担さんなのかしら、またいつか教えてくださいね♪後日談!書くつもりじゃなくて好き勝手終わらせてしまったけど、話数余ってるし機会があれば書いてみようかなー (2021年7月9日 17時) (レス) id: 53a8b8ecd7 (このIDを非表示/違反報告)
ニイナ(プロフ) - りーちゃんさん» りーちゃんさん♪だらだら書いてたのにどのお話も読んでくださってありがとうございました!ハッピーエンドじゃない終わり方を考えるのがけっこう好きみたいです★りーちゃんさんがどんな妄想をしてくれたのかめっちゃ聞きたいです( ´艸`)♪ (2021年7月9日 17時) (レス) id: 53a8b8ecd7 (このIDを非表示/違反報告)
深雪(プロフ) - このシリーズすごく好きでした。この後どうなったのか妄想を楽しみつつ、後日談も読んでみたいような。 (2021年7月9日 0時) (レス) id: a8c1d7b9de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニイナ | 作成日時:2021年6月6日 20時