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彼女とやり直してからは、何もかもが順調だった。
お互いに一度離れたからこそ、どれくらい大事だったかわかって。
前よりももっと大事にしようって思えた。
「二階堂、今日飲みに行かね?」
北山さんに誘われて、飲みに行くことになった。
俺は北山さんの仕事ぶりを昔から尊敬してて、北山さんも俺を可愛がってくれてた。
「なんだか久しぶりですね」
「そーか?」
「そうですよ!最近俺が誘っても、なんだかんだ断られてて」
当たり障りのない仕事の話や、上司の愚痴を言い合いながら二杯目のビールがなくなるころ、北山さんが、ぼそって言った。
「俺、Aと付き合うことになったから」
「…え?」
「お前らのことは知ってるよ」
え?俺らのことって。
体だけの関係だったこと?
「たまたまホテル入るとこ見てさ?
付き合ってるのか聞いたらそうじゃないって言うから」
動揺を隠せない俺を見ずに、北山さんは前を見たまま言う。
「何回もやめろっつったのに。Aは全然、うんって言わねーの」
「…北山さん、Aのこと」
「好きだった、けっこ前から」
そう、だったんだ。
全然気づかなかった。
「北山さんが好きだって言ったら、すぐ落ちますよね」
「……落ちなかったよ」
「え?」
「Aに何回も好きだって言ったし。
二階堂はやめて俺にしろって言ったのに」
北山さんが、俺を見た。
「私は二階堂さんが好きです、って」
……え?
「まさか気づかなかった、とか言わねーよな」
北山さんは少し笑ってたけど、声には怒りが含まれてた。
「Aが好きでもない男に抱かれるような女だって思ってた?」
グラスを、こん、ってテーブルに置くと、北山さんは立ち上がった。
「今さら欲しい、って言っても渡さないから。
それだけ言っときたくて」
居酒屋を出ると、雨が降っていた。
そういえば、Aを最初に誘った夜も雨が降っていた。
あの時雨が降ってなかったら。
酔っ払った勢いなんかじゃなかったら。
『付き合う?』じゃなくて、『俺と付き合って』って言ってたら。
甘い気持ちに素直になって、好きだよ、って言ってたら。
Aは、はい、って笑ってくれたんだろうか。
新緑を濡らす春の雨は、すごく冷たかった。
『翠雨』…END…
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ニイナ(プロフ) - あやかさん» こんな後味のあまりよろしくない話まで読んでくれたの😂この先どこまでも落ちてほしいです(願望)コメントはいつもらっても嬉しいです、ありがとうです♪ (2021年9月24日 20時) (レス) id: 9453ebaee9 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 北山さんのお話、禁断ですがこの先が気になる〜(//∇//)(コメント連投ですいません) (2021年9月24日 12時) (レス) @page22 id: d1d73bb006 (このIDを非表示/違反報告)
ニイナ(プロフ) - 深雪さん» 深雪さんがこのシリーズ好きだって言ってくださって本当に嬉しかったです!深雪さんは誰担さんなのかしら、またいつか教えてくださいね♪後日談!書くつもりじゃなくて好き勝手終わらせてしまったけど、話数余ってるし機会があれば書いてみようかなー (2021年7月9日 17時) (レス) id: 53a8b8ecd7 (このIDを非表示/違反報告)
ニイナ(プロフ) - りーちゃんさん» りーちゃんさん♪だらだら書いてたのにどのお話も読んでくださってありがとうございました!ハッピーエンドじゃない終わり方を考えるのがけっこう好きみたいです★りーちゃんさんがどんな妄想をしてくれたのかめっちゃ聞きたいです( ´艸`)♪ (2021年7月9日 17時) (レス) id: 53a8b8ecd7 (このIDを非表示/違反報告)
深雪(プロフ) - このシリーズすごく好きでした。この後どうなったのか妄想を楽しみつつ、後日談も読んでみたいような。 (2021年7月9日 0時) (レス) id: a8c1d7b9de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニイナ | 作成日時:2021年6月6日 20時