あの空の果てまで〈完結〉

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Aが薄く目を開いた。

「…二階堂さん？」

「頭いったいなー！だいぶ酔ってたから、二日酔い？」

「私も、酔ってました」

「…だよね？」

最低だけど、俺は別れた彼女にまだ未練があったから。

Aと付き合いたい、とかそんなことは考えてなかった。

「まあ、お互いフラれた者同士で寂しかった、ってことで」

そう言って、話も関係も終わらせようとした俺を、Aが遮って言った。

「…でも私たち相性よかったと思いませんか？」

「え？！あー…そう、だね」

「じゃあこれからも。たまに会ってもらえません？」

「は？それって…その、体だけの関係ってこと？」


俺が言うと、Aは頷いた。

Aってそういうこと言うんだ？


いや、まあそれは男にとってはありがたい話、だよ？


「Aはそれでいいの？」


「いいです」


そんな風に始まった俺たちの関係は。

半年ほど続いてた。

Aはいつでも俺の誘いを断らなかった。


「今日の夜、暇？」

俺がそう聞くと。

「…暇ですよ」

Aは決まってそう答えた。


だけどAも嫌々そんなことをしてるようには見えなくて。

いつでも俺の腕の中で気持ち良さそうに乱れてた。


俺もそんなAに溺れながら、だけどどこか冷静な気持ちがずっとなくならなかった。

「A」

「はい」

「なんでこんなことしてんの？」

「……二階堂さんが呼ぶから」


確かに。

Aから誘われたことは一回もなかった。


体を重ねたあとに、甘い気持ちになることだってあったけど。

Aの長い髪を指先にくるくる巻きつけて遊びながら。

「……付き合う？」

そう聞くと。

「二階堂さん、私のこと好きじゃないですよね」

そんな答えが返ってくるだけだった。



半年が過ぎて、季節が春に変わる頃。

前の彼女から、やっぱり高嗣が好きだからやり直したいって連絡がきた。

もうさすがに未練なんてないし、そんなの無理だろって思ってたけど。

久しぶりに会うと、ああやっぱり好きかも、なんて思っちゃって。

もう一度彼女と付き合うことになった。



Aにそのことを言ったら。

「よかったですね」

そう言って、笑って。


それから二人で会うことはなくなった。

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