森の管理人1 ページ18
(……思わずあんなこと言っちゃったけど)
森の小道を歩きながら私は先程自分が発した言葉を脳内で反芻していた。
アインスの他にも誰かが通っているのか、草の無い道には大中小さまざまな足跡が残っている。
(完全に私の勘違いだったらどうしよう──あぁ思い出したら恥ずかしくなってきた──!! どうしよう早とちり女って思われてないかな!? 嫌われてないかな!?)
「どうしだんだい?」
「え──ひぎゃああああああリアル森のくまさんんんんんんn」
「あー待って待って待ってくれ」
声をかけられた方向に振り返ると、目前には大柄なクマが。
思わず叫んで逃げようとする私の服の後ろ襟を、クマは掴んで離さなかった。
(このままじゃ食われるううう)
「食べたりしないって! 大丈夫だから落ち着いてくれ!!」
なんと心の声が漏れていたようで、焦った声音のクマに宥められた。恥ずかしい。
これではアインスに早とちりだと思われても無理はない。
「急に声をかけて驚かせてすまなかった。俺はこの森の管理を任されているミエルという者だ。──ところで、嬢ちゃんはどうして正座なんだ?」
「今、己の軽率な振る舞いを猛烈に反省しているところです」
「一体どうしたんだ??」
本当にわけがわからないという風に、ミエルと名乗ったクマは頭上に疑問符を浮かべていた。
そうだ、外れといっても街の住人なのだから挨拶はしっかりしておかないと。
「あの、私、最近この街にやってきました。Aといいます」
「Aって……あぁ、『ドゥオールの迷い子』か!!!」
「なんで浸透してるんですか」
「ミティが」
「────」
ミティ含むシュピール民の情報伝達能力に絶句する。
何日と経っていないにも関わらず森まで名が知れているとは。
「慣れないところで苦労することもあっけどよ、ここもけっこういい街だろ?」
がっはっはと豪快に笑うミエルは、気前のいい親戚のおじさんのような雰囲気を持っていた。お父さんのような安心感ともいう。
第一印象がこの数分で一変して、あっという間に心の距離が縮まった。
「そうですね、みなさんとっても優しくて良い人ばかりです」
私は答えた。
もっと、知りたい。そう思える魅力が、シュピールにはたくさん存在する。
「それじゃあ、アインスの荷物を持って行かないといけないので、これで失礼します」
本来の目的を思い出した私はミエルに一礼すると、街の方角を目指して歩きだした。
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葉月だんご(プロフ) - 麦カケさん» 感想ありがとうございます〜! 私も書いてるとき、主人公の正体をバラそうか隠そうか迷いました(笑) 今後の展開にもぜひ、ご期待ください(*´ω`*) (2020年12月30日 23時) (レス) id: 1261bb0f48 (このIDを非表示/違反報告)
麦カケ(プロフ) - 初めまして。人形達が持ち主だって気づいてない所がせつないです(でもそう言う設定好きです)これからどう言う展開になっていくのか気になります。無理せず作者様のペースで頑張ってください! (2020年12月30日 17時) (レス) id: ea0439ca7f (このIDを非表示/違反報告)
葉月だんご(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます♪ お気に召していただけたようで何よりです! この感想を糧に引き続き更新がんばりますので、お付き合いいただけたら幸いです〜(*´艸`*) (2020年3月30日 17時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - オリジナルでいい作品を久しぶりに見つけられました! 人形たちの微笑ましい生活をこれからも見ていきたいと思います! (2020年3月15日 13時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
だんご(プロフ) - ぐうたら猫さん» コメントありがとうございます〜! 気に入っていただけたようで何よりです♪ ネコのぬいぐるみってカワイイですよね← (2020年1月8日 2時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉月だんご | 作成日時:2019年10月19日 12時