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因縁の対決 in中華街 ページ12

鏡花と子供は猫探しの依頼に戻り、現在は駐車場で日向ぼっこをする猫を揃って撫でていた。何故自分はここに居るのかと疑問を持ち始めている芥川の側に子供が歩み寄る。


「中華街の方に行ったらしい」

「その情報は何処から得た」

「あの猫に教えてもらった」

「そうか」



□□□



中華屋の店主に写真を見せつつ、猫の所在を訊ねている鏡花を少し離れた所から眺め、気まぐれを起こした芥川は、己の隣に立つ子供に話し掛けた。


「童、名は」

「A」


降ってきた沈黙。子供はひょいと顔を上げて芥川を見た。初対面から今まで一切表情の変わらなかった芥川が、驚いたように口を少し開けて自分を見ていた。


「何だ。変な顔をして」

「……厭、何でもない」



□□□



「お嬢ちゃん可愛いからね、オマケだよ」

美少女は得だ。鏡花は先ほどの店主から貰った肉饅を器用に三つに割り、湯気の漂う一欠片を子供に、もう一つを芥川に差し出した。


「貴方の分」

「僕は要らぬ」

「手が火傷しそうに熱い。早く受け取って」

「……」

「美味いな、芥川さん。良かったな」

「僕は腹を満たす為に食べているだけ……」



□□□



建物の隙間から、耳と尾が欠け、猫らしからぬ威厳を纏う野良猫がのっそりと顔を出した。芥川を一瞥し、フンと鼻で笑う。


「あの老猫は……!」

「知り合い?」

「僕が野良犬のように貧民街を這いずり回っていた時分、幾度あの猫畜生に食糧を横取られた事か! 真逆生きて再び見えるとはな。来い。此処で決着を付けてやる」

「此処で因縁の対決を始めないで」

「鏡花、この人急に饒舌になったぞ」

「戦闘が大好きな人だから」

「大好きな人なのか」



□□□



夕刻、空が茜色に染まりかけても目当ての猫は見つからない。「最初の公園に戻っているかもしれない」という鏡花の提案により、三人は昼間の公園に戻る事になった。

「おとうさぁん」

あどけない声が父親を呼ぶ。幼い男児が仕事帰りと思わしき男に駆け寄り、赤子を抱いた母親らしき女と連れ立って帰るのが見えた。

その親子が最後の一組だったらしく、公園にはもう誰もいない。直前まで男児が乗っていたブランコがひとりで揺れていた。


「居た。鏡花、芥川さん。茸ご飯だ」

「マロン」

「そうだった」


芥川は急に夢から覚まされた心地がした。「お父さん」と呼ぶ声に、何故自分は振り返ってしまったのだ。ああいった安寧の生活には無縁であるはずの自分が、何故。

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ロト - こめ(元団子)さん» お久しぶりです!最近わりと多忙でした…少し時間が空いてきたので見てみようと思えば結構更新されてて嬉しかったです!癒されました〜! (2019年8月25日 23時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ロトさん» ロトさん! お久しぶりですね! そうです娘主は奔放な子供なので自由に遊び回っては国木田さんに叱られ 最終的には追いかけ回されますw (2019年8月25日 22時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 近所迷惑(社員寮)……つまり、国木田さんの胃痛が増すんですね分かります。 (2019年8月25日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 来霧さん» やったー!ありがとうございます これからもお付き合いください! (2019年8月19日 2時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - 続きが!きになりすぎます!!応援していますー!頑張ってください! (2019年8月17日 0時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こめ | 作成日時:2019年6月22日 21時

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