マイペースに ページ11
現在、互いの所属する組織は特に敵対している訳ではないので、これは個人間の問題と云う事になる。芥川と鏡花の因縁なぞ知る由もない子供は、呑気に鏡花の袖を引いた。
「鏡花、栗ご飯が逃げた」
「栗ご飯じゃなくてマロン」
「そうだった」
「それじゃあ」と鏡花は気不味げに芥川から視線を外し、子供の手を引いて駆け出した。ところが子供は芥川の手を掴んだ。少女の力とはいえ、突然引っ張られた芥川はぐらりと平衡を崩した。当然転ばぬように足を動かす事になる。
「は?」
「貴方も一緒に来てくれ」
「何をしてるのA!?」
「わかめご飯はこの人に懐いてた。この人が居た方がきっと早く見つかる」
驚愕はしたもの、子供の云う事も一理あると思い直し、鏡花は冷静に戻った。
「わかめご飯じゃない、マロン」
「そうだった」
強い力で腕を引っ張られつつ、芥川は訳もわからず走った。元暗殺者の鏡花が駆ける速度は侮れないのだ。
□□□
芥川の脆弱な肺は早々に限界を迎えた。
「ふざ、けるな、ゲホッ」
「反省はしている。でも貴方が立ち止まったせいでマロンちゃんを見失った節もある」
「貴様……」
激しく咳き込みながら道路の脇に蹲る芥川を二人の少女が見下ろす。目当ての猫は見失ってしまった。
「アンタ大丈夫か。吐くか?」
「黙れ事の元凶が」
初対面の人間の前で嘔吐する趣味はない。芥川は塀に手を付き、真っ青な顔でふらふらと立ち上がった。口をへの字に曲げた鏡花が追い打ちをかけるように芥川の脛を草履で蹴る。
「あの子が私以外に自分から話し掛けた。これは嫉妬」
「知らぬ。向か脛を蹴るな鏡花。やめ、やめろ!」
芥川は流石に怒った。しかし鏡花も「貴方は私に爆弾を括り付けたのに?」と要所要所で反論するので、最終的には異能を使った戦闘になった。
子供は公園で拾った蝋石でアスファルトに落描きをしながら、それが終わるのを待った。ひとり遊びが上手い子どもだ。
「疲れた」
「そうだな……」
不毛な争いに互いに嫌気が差した鏡花と芥川は、ほぼ同時に異能を解除した。絶えず聞こえていた金属音や風切り音が急に途切れた事に気がついた子供は、地面にしゃがんだまま二人を見上げた。
地面にはたくさんの動物が描かれている。時間の経過を物語っているそれらを見て、鏡花は子供に訊ねた。
「……これは何を描いたの?」
「クマだ」
はて、熊とはこんなに牙の長い生物だったろうか。鏡花はそっと首を傾げた。
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ロト - こめ(元団子)さん» お久しぶりです!最近わりと多忙でした…少し時間が空いてきたので見てみようと思えば結構更新されてて嬉しかったです!癒されました〜! (2019年8月25日 23時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ロトさん» ロトさん! お久しぶりですね! そうです娘主は奔放な子供なので自由に遊び回っては国木田さんに叱られ 最終的には追いかけ回されますw (2019年8月25日 22時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 近所迷惑(社員寮)……つまり、国木田さんの胃痛が増すんですね分かります。 (2019年8月25日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 来霧さん» やったー!ありがとうございます これからもお付き合いください! (2019年8月19日 2時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - 続きが!きになりすぎます!!応援していますー!頑張ってください! (2019年8月17日 0時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作成日時:2019年6月22日 21時