鍾愛 32 ページ33
芥川君と別れてシャワーを浴びて着替えてから中也さんの元へ向かう。
後は報告書を1時間ほどで仕上げて帰るだけなのでドライヤーで髪を乾かした後に邪魔な毛を括って前髪だけ少し整え、唇にほんのり赤色を乗せて中也さんの元へ向かう。
『失礼します。只今戻りました』
「おかえり」
『はい』
執務室に戻ると本棚から書類を探している彼が。私は自分のデスクに荷物を置いて中也さんの所まで行く。
『何をお探しですか?』
「嗚呼、この前任務に当たった異能力者の書類をな…」
『この前…一番最近のだと此れです』
少し背伸びして青いファイルの中から小冊子を取り出す。中也さんは内容を少し確認するように数枚めくってから有難うな、と頭に手を置いた。
「怪我は無さそうだな」
『大丈夫です』
彼は書類を一度ファイルと棚の隙間のところに置くと私の腕を引き寄せて私は彼の腕の中に収まる。
「一寸充電」
最初は先ず驚く。そしてその次は照れる。
この速い心音が彼に伝わってしまわないだろうか。そんな緊張感と共に嬉しさを感じる。
「あー、良い匂いする」
『あ…シャワー入りたてですからね』
「…好き」
『私もです』
甘えてくる彼の頭を撫でる。それにしても彼は付き合ってみると思いの外感情はストレートに口にするタイプだった。もう少しツンデレだと思っていただけに好意を口にされるとかなり嬉しい。
やがて中也さんが離れると充電完了、と笑った。かっこ良い。
『帰還連絡をしに行ってきます』
くるりと扉の方に体を向けると一寸待て、と云われて振り向く。肩に右手を置かれてもう片方は後頭部に滑らせられる。すると中也さんの香水がふわりと香り同時に唇に温かいものが触れた。
一瞬の出来事に何が起きたかわからなかった。
然し、この感触を私は知らぬ訳ではない。自分の唇に熱いものが触れて何が起こったかを漸く理解した後に顔が熱くなっていくのを感じた。
『も、もう!わわ私行きますからね!』
「おう。行ってらっしゃい」
そう云って逃げるようにして部屋を出る。
何なんだろう、あの余裕さは…と色気たっぷりの彼を思い出して心の中で悶える。
(無理…心臓持たない…)
何やらにやけて真っ赤な頬を押さえながら歩く私を目撃した部下が何人かいて、心配されていたと云うのは後々西野さんから指摘をもらって気づいた事だった。
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あい - ??? (1月29日 23時) (レス) id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新中でしょうか?ワクワクです (1月29日 20時) (レス) @page43 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - これ太宰さんどうなっちゃうんでしょうか……あと文才ご凄くありますね! (1月22日 11時) (レス) @page31 id: 68fda9e290 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - こういう系あまり読み続けられないんですがこれは一気に読めちゃいました…!文章能力すごい高いですね…尊敬…更新待ってます!頑張ってください! (8月26日 15時) (レス) id: efb8355445 (このIDを非表示/違反報告)
ライム - こういう物語って大体中也ポジの人は振られちゃうので、この展開メッチャ好きです!私が中也推しなのもあるかもですけど、wとにかく更新楽しみにしてます! (3月25日 3時) (レス) @page42 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2020年1月25日 21時