鍾愛 33 ページ34
私達は大手企業との商談の為遠方まで出張に出掛けていた。
商談自体はスムーズに進み問題なく済みそうだったのだが、近道をしようと部下が山道で車を走らせたところ急激に天候が変わり土砂崩れが起こってしまったらしい。
異能を駆使して強引に帰る案を考えたものの服が濡れるという理由で却下になり、結局山頂のホテルで山道の復旧を待つ事になった。
其処迄は未だ良いのだ。其処迄は。
(同室。同室だって…どうしよう、同室?)
「他の奴らの分も考えたら部屋数が足りなくて俺らで同室だとよ。悪ィな」
『いっ、いいいいいいいいえ!全く気にしないでください!わ、わわわ私はだだ大丈夫ですっ!はい!』
「動揺しすぎだろ」
ちらりと部下の方を見ると親指を立てていた。嗚呼もう、余計な事して…
そんな会話をしながらホテルの最上階の廊下を歩く。
何だかわからないが心臓がドキドキ飛び跳ねていてものすごく緊張する。
此処だ、と部屋の前で立ち止まってカードキーで扉を開けて中に入り部屋を見渡す。
『広…い』
大きなソファ、大きなデーブル、大きなベッドがあり開放的な窓の奥には広いバルコニー付きだ。
寝室を覗いてみるとキングサイズの柔らかいベッドがあったりキッチンもサービスドリンクや無駄に高性能な冷蔵庫、更にお風呂は当然のようにジャグジーで露天風呂までついてる。
『あの…一部屋しか空いてないって…』
「嗚呼。スイートルームがな」
『で、ですよね!?私シングルで平気ですよ?』
矢っ張りこれだから幹部様は…!と部屋を出て行こうとする。部下も余計な気を使わなくていいのに。
すると腕を掴まれてそのまま後ろに引き寄せられてお腹に腕をまわされたかと思うと気づくと彼の腕の中。
「良いじゃねェか。俺たち恋人同士だろ?」
『……ッ』
中也さんの低くて甘い声が耳に響く。此れは無理だ、心臓に悪い。とガチガチに照れる。
「手前も疲れてるだろ。先風呂入って来い」
『お言葉に甘えさせて頂きます…』
本来ならば、譲るべきところなのだがこうでもしないと身体から熱が抜けない。
私は半ば逃げるようにして無駄に広い風呂場へ向かう。
取り敢えず私が最初にしたことは頭から勢いよく冷却水をかけた事だ。
(今晩、どうしよう…)
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あい - ??? (1月29日 23時) (レス) id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新中でしょうか?ワクワクです (1月29日 20時) (レス) @page43 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - これ太宰さんどうなっちゃうんでしょうか……あと文才ご凄くありますね! (1月22日 11時) (レス) @page31 id: 68fda9e290 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - こういう系あまり読み続けられないんですがこれは一気に読めちゃいました…!文章能力すごい高いですね…尊敬…更新待ってます!頑張ってください! (8月26日 15時) (レス) id: efb8355445 (このIDを非表示/違反報告)
ライム - こういう物語って大体中也ポジの人は振られちゃうので、この展開メッチャ好きです!私が中也推しなのもあるかもですけど、wとにかく更新楽しみにしてます! (3月25日 3時) (レス) @page42 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2020年1月25日 21時