鍾愛 20 ページ21
『…って事があったの』
「はァ!?何を迷ってるの?もう、Aちゃん中也さんにしよう!ね?」
『否、私中也さんをそんな風に意識したことがなくて…』
翌日の仕事中、私の顔を見て何かを察した樋口ちゃんは「これは女子会案件だね!」等と云い、流れで私の家では勝手に女子会と云う名の尋問がなされた。
「ねえ、Aちゃん。あの中也さんだよ?
イケメンで現最年少幹部という超出世コースな肩書を持ち強力な異能と絶大な信頼を誇り更に、女性モテ度ナンバーワンの中也さんから告白されたんだよ!?それを振るって勿体ないんじゃないかな!」
『う、うん…』
樋口ちゃんがぐい、と詰め寄ってくる。私はそれを避けるべく上体を少し反らす。
木のローテーブルを強く叩いたせいかグラスや食器ががちゃり音を立てた。
…因みに今のセリフ、ノンブレスである。
「…声を荒げてごめん。でも、私は良いと思う」
そんな私の引き気味な態度を見て樋口ちゃんは座り直す。明日も仕事の為、私はグラスに注がれたジンジャーエールを少し飲んで考える。
『…確かにね、中也さん優しいよ。一緒にいて安心するし、楽しいし…でも私は恋愛対象として見た事がないというか…』
うん。実際私たちの間柄を一番的確に表現するものとして友達、親友、恋人、家族…色々あげてもどれにも当てはまらない。
上司と部下と云うのが一番腑に落ちる。
樋口ちゃんは私の発言を聞いて少し考えた。
「…前、何かの本で読んだけど…接吻して吐きそうになるかならないかが恋愛対象のラインらしい」
そんな発言に、飲んでいたジンジャエールを危うく噴きそうになる。
『き!接吻!?中也さんは仮にも、上司であって、そんな!』
「いやぁー?意外と出来ると思うよー?」
『そんな適当な…』
矢張り芥川君が超鈍感なだけあって樋口ちゃんのアプローチの仕方は中々目を見張るものがある。
太宰さんも中也さんも何方との恋を選ぼうが、二人が私と対等な関係になることってきっと無いんじゃないかと思う。
太宰さんはあの通り不毛な片想いで幕を閉じてしまったし、中也さんも恋人である以前に上司。
その分け目が私につけられるか。
「ねぇ、単刀直入に聞くけど逆に中也さんを振る理由っていうか…嫌いな所って云うのはあるの?」
『中也さんのことを…?』
考えたことも無い。と云うか逆に、とりわけ不快感を覚えたことがあるわけでもないし彼といるのは寧ろ居心地が良い。
嫌いな所?彼の短所?
『…ない』
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あい - ??? (1月29日 23時) (レス) id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新中でしょうか?ワクワクです (1月29日 20時) (レス) @page43 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - これ太宰さんどうなっちゃうんでしょうか……あと文才ご凄くありますね! (1月22日 11時) (レス) @page31 id: 68fda9e290 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - こういう系あまり読み続けられないんですがこれは一気に読めちゃいました…!文章能力すごい高いですね…尊敬…更新待ってます!頑張ってください! (8月26日 15時) (レス) id: efb8355445 (このIDを非表示/違反報告)
ライム - こういう物語って大体中也ポジの人は振られちゃうので、この展開メッチャ好きです!私が中也推しなのもあるかもですけど、wとにかく更新楽しみにしてます! (2023年3月25日 3時) (レス) @page42 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2020年1月25日 21時