愛吐 33 ページ42
結論から云うと、停戦条約は破綻___否、保留という形で終わった。
久しぶりに顔を出すポートマフィア本部ビル。今晩はQの奪還作戦。私も改めてQと組合についてまとめた資料を抱えて執務室に急ぎ足で向かう。
その際にすれ違ったのは西野さんだった。
「…あら」
『お久しぶり、です』
彼女もまた、早足で歩いていた。彼女は事務作業に追われていたそうな。証拠に凛とした立ち姿は変わらないもののほんの少し疲れの色を見せていた。そんな彼女は私を見ると少しだけ目を細めた。
「何だか顔つきが変わったのね」
『え…』
西野さんはそう一言残すとまた歩いて行った。なんとなく顔に触れてみる。
(顔つきが変わった…そうか、私はポートマフィアで生きていく意味を見つけた)
ここに来て漸く、加入5年目にして気づいたことだった。
考えながら歩いていると気がついたら目的地に到着していた。
コンコン、とノックをし中也さんの執務室に入る。幹部補佐、しかもこうした忙しい時には許可を得る前に入ることが多い。
よって、中にいた彼は私の姿を見て歩いてきた。
「手前、太宰の野郎に何かされてねェか!?」
先ずは謝罪か、挨拶か、何から云おうかと頭の中で考えていると先に言葉を発してきたのは彼の方だった。
『…はい。何も…』
何故か焦っている彼に両肩を掴まれる。これは事実のため、普通に肯定した。然し、彼の目から疑いは消えていなかった。
「…本当か?」
『はい』
「太宰の家で寝起きしてたと聞いたンだが」
『何もないです』
「…そうか」
そう云って彼は腕を組み口角を上げて微笑む。そしてなら…と口にした。
何だろう、この寒気は。
「"太宰の狗"になった挙句独断先行で命を投げ打った件についてはどう落とし前つけるんだ?」
とびきりのどす黒いオーラを隠しませず纏わせる我が上司。報告書一部改竄したのに何処から漏れたんだ、と内心溜息を吐く。
彼の圧に負けて何も云い返せずにだって…と云う言葉しか出てこなかった私に対して彼の怒りは沸点まで到達したらしい。
「云い訳はいいんだよ。さっさと其処に正座しろや」
これ、下手したら夜の任務直前まで続くかな。と他人事のように、遠くを見つめた。
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桜雪(プロフ) - りかまるさん» コメントありがとうございます。応援してくださる方がいて本当に感謝してもしきれません。拙い物語ですがこれからもよろしくお願いします、! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - のら猫さん» 10分、、それはすごい、、!コメントありがとうございます!自分のペースで頑張ります! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - びあんさん» コメントありがとうございます。やっぱり小説を書くのってとても労力のいることだと思います。びあん様も同じ作者の身として無理のない程度に頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - sonataさん» ありがとうございます。sonata様の作品とても素敵でした、、!大好きだなんて言葉を頂けてとても嬉しいです。お互い頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
りかまる(プロフ) - ゆっくりでも大丈夫です。無理なく、執筆して頂けたらと思います。応援しています! (2019年3月24日 22時) (レス) id: dbac4f4de5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2018年12月29日 21時