愛吐 32 ページ41
武装探偵社とポートマフィア、横浜の二大組織が会合を開く。
仲介人である太宰は不機嫌そうな面持ちであるが、ポートマフィアの首領である森鴎外を始めとし黒蜥蜴の面々が護衛につくとようこそ、首領。と白々しく歓迎する素振りを見せた。
「四年振りだねぇ。私が買ってあげた外套はまだ使っているかい?」
「もちろん、焼きました」
森は手本のように笑う。そんな森に対し太宰は目を細める。Aが建物の影から姿を現す。森は相変わらずにこにこと笑っていた。
「櫻田くん」
『ご心配をお掛け致しました』
Aはすっと、頭を下げる。太宰は約束通りAはお返し致します、と云った。
「ご苦労だったねぇ…報告書で君の頑張りはよく見たよ」
若干、冷たい森の声色にぴくりと眉頭を動かすA。Aは森に軽く会釈すると彼の少し後ろに着く。
「ポートマフィア首領、森鴎外殿」
「武装探偵社社長、福沢諭吉殿」
二つの組織の長が対峙する。其々後ろで見守る部下は緊張した面持ちで身構える。
「竟にこの時が来たな」
「探偵社とポートマフィア。横浜の二大異能組織の長がこうして密会していると知ったら政府上層部は泡を吹くでしょうねぇ」
福沢は、日頃の冷静さを一ミリたりとも乱さず一方森は、近隣の知り合いにでも今日の天気を尋ねるかのように穏やかだ。
慎重な空気の中福沢の伏せられていた三白眼が開かれる。
「単刀直入に云う。探偵社の或る新人が貴君らポートマフィアとの"同盟"を具申した」
ほう、と森が相槌を打ち、福沢は続ける。当初己は反対したが、ポートマフィアに何度も拐かされた者が提案した故言葉の重みが違う。組織の長として耳を傾けざるを得なかったと。
福沢のその言葉にお互い苦労の絶えん立場ですな、と相変わらず世間話の一部を聞いてるかのように笑う。
「結論を云う。同盟はならずとも一時的な停戦を申し入れたい」
森はその言葉に目を見開き、やがてシニカルに目を細めた。
森は戦争戦略論の研究家の喩えを持ち出す。
国家戦争と彼らのような非合法組織には共通点がある。
其は、何方が協定違反をしようが罰する者がいない。損をするのは信じた方で、先に裏切ったほうが利益を得る____と。
互いの部下は何度も戦い、マフィアは面子を潰され探偵社は部下を殺されかけている。完全な協調は不可能に近い。
「ではこうするのは如何だ?」
福沢は提案すると同時に腰にある刀を握る。
「今此処で凡ての過去を清算する」
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桜雪(プロフ) - りかまるさん» コメントありがとうございます。応援してくださる方がいて本当に感謝してもしきれません。拙い物語ですがこれからもよろしくお願いします、! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - のら猫さん» 10分、、それはすごい、、!コメントありがとうございます!自分のペースで頑張ります! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - びあんさん» コメントありがとうございます。やっぱり小説を書くのってとても労力のいることだと思います。びあん様も同じ作者の身として無理のない程度に頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - sonataさん» ありがとうございます。sonata様の作品とても素敵でした、、!大好きだなんて言葉を頂けてとても嬉しいです。お互い頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
りかまる(プロフ) - ゆっくりでも大丈夫です。無理なく、執筆して頂けたらと思います。応援しています! (2019年3月24日 22時) (レス) id: dbac4f4de5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2018年12月29日 21時