けじめ ２５ ページ26
何日目かの夕方の事だった。
物思いにふけ、窓の外から夕日が沈むのをぼんやりと眺めていた。
突如医務室の扉がノックされ、私は慌てて仕事に戻りはい、と短く返事をする。
「久しぶりじゃな…Aよ」
扉の方を見やると花魁風の着物を着た妖美な女性が立っていた。
『尾崎幹部…』
珍しい客に私はあっけらかんとした。
何故尾崎幹部が…？
そして彼女と直接的に関わったことはあっただろうか…強いて云うなら太宰幹部の付き添いで拷 問部屋に行った時くらいだ。
「A、座っても良いかえ？」
『へ？…あ！どうぞ！』
バタバタと慌てて寝台の横から折りたたみ式のパイプ椅子を取り出す。
尾崎幹部は其処に座った。
「変わってないのう…」
尾崎幹部は壊れ物を扱うかの様に私の頬に手を添える。そして何か愛しい物を見る目で見詰められる。強いて表現するならば親のような、目で。
目を合わせれば一瞬で悟られてしまうだろう。
尾崎幹部のこの行動がどう云う物かも皆目見当がつかない。
余りにも不自然に目を合わせようとしない尾崎幹部は流石に問うた。
「Aよ。若しかして覚えていないのかえ？」
『ごめん、なさい…』
尾崎幹部はそうか、と悲しそうに目を伏せる。
私が此処に勤め始めて１年間。
少なくともこの１年の記憶の中にはどうにも思い当たる節はなかった。
「昔のAを私は知っとるのじゃ…
私は取引でよく遊んだ中じゃった。無邪気でしょっちゅう外を駆け回り…A？」
私は口元に手を抑えた。
昔の事については消し去りたかった。
顔が強張り吐き気が込み上げてくる。
「思い出したく無い事迄思い出させてしまったな…すまんのう」
『いえ…大丈夫です。続けてください』
尾崎幹部は心配そうに眉を顰めていたが、やがて何かを懐かしむかの様に遠くの方を見つめた。
尾崎幹部曰く、私の家お尾崎幹部の上司…ポートマフィアは取引をしていた。
Bioneにしろポートマフィアにしろ、実家は裏社会に手を出していたなんて。
まああの家ならやり兼ねない、か。
話を戻すと、其処で幼い頃私は尾崎幹部によく面倒を見てもらっていたらしい。
実は中原準幹部の補佐として抜擢してくれたのも尾崎幹部だ。
この前私が病気で倒れた時忙しい合間縫って林檎を剥いてくれたのも合点が行く。
本当はこの組織に私が入った時に話したかったらしいが幹部と云えど暇では無い。
時間が取れる日が無かったのだと云う。
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nemucan427(プロフ) - 桜雪さんはじめまして！この作品面白くて大好きです お手数ですがパスワードを教えていただけないでしょうか？ (9月1日 21時) (
レス) id: 8afaa5b029 (このIDを非表示/違反報告)
なずな(プロフ) - 桜雪さんはじめまして！とても面白かったですよろしければパスワードを教えて頂きたいです (2023年3月28日 11時) (レス) id: 77590b4a4c (このIDを非表示/違反報告)
アルルの「 」 - 太宰さんの歪んだ愛し方が本当に大好きです・・・！！ (2023年3月13日 1時) (レス) @page41 id: a35ce8017e (このIDを非表示/違反報告)
嶺亜(プロフ) - 桜雪さんはじめまして!!作品とても面白かったです。よろしければパスワード教えていただきたいです。よろしくお願いします。 (2023年2月5日 18時) (レス) @page10 id: be050932d4 (このIDを非表示/違反報告)
霞奈斗(プロフ) - この作品に出会ったばかりなのですが、とても面白く続きを読みたいです！パスワードを教えて頂くことは可能でしょうか...？( ˊᵕˋ ;) (2023年2月5日 8時) (レス) id: c32082b1c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜雪
| 作成日時：2018年3月29日 13時
